▽ ハーマイオニーの怒り
「それでね、まだ返事してないのよ」
渡り廊下のベンチ、ハグリッドの小屋が見えるところでハーマイオニーとサラはよく待ち合わせをする。
「ビクトール・クラムから誘われるなんてやっぱりハーマイオニーは魅力的なのよ」
嫌味なく本心で自分のほうが嬉しそうにニコニコ笑うサラにハーマイオニーは少し照れたように苦笑いした。
「魅力的だったら、誘ってくれてるはずよ…」
ボソッと小さく囁かれた言葉はとても切なそうで、ついサラも悲しい顔になる。
「…ロン?」
「まぁ…そうなるのかしら」
ロンとハーマイオニーはお互い惹かれあってるのに気付いていない。まるでその事実から逃げ出すようにお互い喧嘩ばかりしている。
「私クラムと行くわ、誘われないのに待ってても意味がないもの」
「ハーマイオニー、私は待つべきだと思うわ、ロンは照れ隠しで失礼な誘い方してくるかもしれないけど絶対にあなたを誘うはずよ」
「そうかしら…」
「絶対に好きな人と踊るべきよ、そう。絶対。ハーマイオニーには幸せなパーティーになってほしいの」
サラの薄紫の瞳が真剣にハーマイオニーを見つめる。その表情があまりにも切なくて今にも泣き出しそうなのでハーマイオニーはそっとサラの手を握った。
「わかった、私待ってみるわ」
ハーマイオニーの答えにサラは安心したように優しく笑った。今度はハーマイオニーが質問する番だ。
「それで、あなたは誰といくの?」
ハーマイオニーはそれが心配だった。ハリーはチョウと行くと嬉々とグリフィンドールの談話室ではしゃいでたのを見たのでサラとは行かないだろう。
「…セドリック・ディゴリーよ」
ハーマイオニーの頭の中で全てが一致した。正直ロンもハーマイオニーもチョウはセドリックと行くのだろうと思っていた。それが何故かハリーは断られることなくチョウとパートナーになった。
これでわかった、サラが代わりにセドリックと出るからだ。
「サラ、あなた…」
「優しい人よ、毎日手紙もくれるし」
ハーマイオニーはこの怒りを誰ぶつけていいのかわからなかった、だけど、サラがこんな思いをしてるのにのうのうと喜んでるハリーもイライラするし、好きな人と踊れと言っておいて自分は好きな人のために好きな人じゃない人と踊るサラにもイライラした。
「見返してやりましょ!」
「え?」
「パーティーにうんと可愛くなっていくの!ハリーに後悔させるために!」
ハーマイオニーの出した案にサラは悲しそうにはにかむ。
「ハリーはきっとチョウに夢中よ」
「それでも!やる!いい!?」
ハーマイオニーのあまりの剣幕に思わずこくんと傾いたサラはこうしちゃいられないとハーマイオニーにそのまま連行されることになる。
「今から始めないと間に合わないわ!急いで、サラ!」
何が始まるのかわからなかったが、少しだけワクワクした。
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