「危ない!」

バックビークの攻撃にジュリアは間に合いドラコを突き飛ばし、倒れたドラコをバックビーグから守るように、ジュリアは両腕を広げてバックビーグに背を向けた。


バックビークは鉤爪を大きく掲げ勢い良く広げたジュリアの背中を引き裂いた。


「ッ…あ゛!…っく、」


瞬間、切り裂かれたジュリアの背中から鮮血が溢れ血飛沫が舞った。


肉と一緒に髪も切り裂かれ、背中まであったジュリアの髪は無惨にも血と一緒にハラリと宙を舞う。


素早く飛んできたハグリッドがバックビークに首輪をかけた。


「、ジュリアッ!ジュリアッ!嘘だ…、ジュリエットッ!」


ジュリアの血飛沫にまみれながらドラコは自分にもたれて倒れたジュリアを揺する。


「大丈、夫…そんなに深くないわ、ね?」


掠れた声で小さく囁き、ドラコの頬に飛んだ血を拭こうと指を動かすが力が入らない。


「あ、…ぁ、ジュリエット…ッ…」


ドラコはジュリアを優しく抱き締める。


「…私は、大丈夫、ドラコは怪我…してな、い?」

「、あぁ…ッ」

「よか…った、」


ジュリアの身を心配し喚く声と真っ赤に染まったジュリアにクラス中がパニックに陥った。


「見、ろ!あ、あいつ、ジュリアを殺した!」

「死にゃせん!」


ドラコのローブはジュリアの血で真っ赤だった。

同じように二人がいた場所もジュリアの髪と血で赤く染まっていた。


ハグリッドが焦ってジュリアに駆け寄り、ハーマイオニー達三人も真っ青になって走って来た。


「、ジュリア…!大丈夫!?」


ハーマイオニーは泣いていた。


「…ぅ、…ぐ、…っジュリア…ッ!」


ロンも泣くのを耐えているのか鼻をずびずびと鳴らしている。


「ジュリア、」


ハリーに至ってはドラコに対する怒りからか、青を通り越して白くなっている。


「大丈夫、平気よ…痛、くない…わ、」

弱々しく笑うジュリアの言葉を三人は信じなかった。

にじむ脂汗と、青白くなる肌がそれを物語っていた。


「この子を医務室に運ばにゃ――。手伝ってくれ」


ハグリッドがドラコにもたれているジュリアを抱え上げた。



ハグリッドの視線に気付いたハーマイオニーが涙を拭い、走っていってゲートを開ける。


ハリーが震える手でジュリアの手を握り締めれば、ジュリアも握り返す。


「…私、大丈夫よ…。本当に、だから…そんな顔しないで?」



皆に気付かれないようにジュリアは濡れたエメラルドを拭った。


背後で生徒たちが騒然と言い争うのが遠きながら聞こえた。

ジュリアはグッタリとしながらハグリットに運ばれ、ドラコはそれに付き添うように歩いて行った。


残された三人は、散らばったジュリアの髪を拾い集めた。

彼女が大切に伸ばしてた髪を、そのままにはしておけなかった。


思考回路は乗っ取られた
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