今日は珍しく空が晴れ渡っていた。ハグリッドの小屋に向かうため、四人は歩いていた。

ジュリアが茶葉の件を気にしてハリーをちらちら横目で見ていると、ハリーが小さく声を上げた。


視線を向けると、三人組の後ろ姿があった。

ドラコと取り巻きの巨大二人だ。


魔法生物飼育学はスリザリンとの合同授業。

ジュリアは授業も一緒にいれて嬉しい気持ちと、嫌な予感で複雑だった。


只でさえドラコはハリーを敵視しているのに



「さあ、急げ!はやく来いや!」


上機嫌のハグリッドは嬉々と足を進める。


「みんな来たか?じゃあ着いてこい!」

少し歩けば広い牧場のようなところに出た、するとハグリッドが生徒に振り返る。


「最初にやることは教科書を開くこった!」

「こんなのどうやって開けって言うんだ」


ドラコが教科書を掲げて不機嫌そうに眉を顰め、嘲るように言った。


「だーれも教科書を開いとらんのか?撫ぜりゃーよかったんだ!」


ハグリッドは当たり前のように言った。


言われた通り手に持つ怪物の本の表紙をひと撫ですると凶暴な教科書は大人しくなった。


「僕ら、なんて愚かだったんだろう。撫ぜりゃーよかったんだ!」


皮肉にハグリットの真似をして笑ったドラコにジュリアは頭が痛くなった。


「俺は、こいつらを愉快だと思ったんだが…」

「愉快ですよ、指を噛み切ろうとする教科書なんて、まったくユーモアたっぷりだ!」

「黙れ、マルフォイ」


ハリーが唸るように言いドラコを睨み付けた。


「えー、俺は…、そうだ。俺は森に入って連れてくるから、お前らはここにいろ」


心なしかしょんぼりと、ハグリッドは森に入っていった。



「まったく、あいつが僕らの先生?笑わせる。この学校はどうなってるんだ?」


「黙れと言ったぞ、マルフォイ」


ここぞとばかりにドラコは意地悪な顔でハリーに振り向く。


「吸魂鬼がいないと随分元気じゃないか、ポッター」

「なんだと!」

ロンがドラコに今にも掴みかからんばかりの勢いで詰め寄り、ジュリアがそれをやんわりと窘める。


その時、甲高い叫び声が聞こえた。

ハグリッドが十数頭の魔法生物を連れてこちらに歩いて来た。


「こいつらはヒッポグリフ、誇り高い生き物だ」


ジュリアはヒッポグリフを見て思わず小さく悲鳴を洩らした。


「そんじゃ、もっとこっちに来いや!」


ハグリッドが遠巻きの生徒たちを手招きしながら呼ぶ。

皆巨大なヒッポグリフの大きな鉤爪や鋭い嘴が恐ろしくて近付けない。


「忠告しとくがヒッポグリフは誇り高くて怒りやすい生き物だ。絶対に侮辱しちゃならん。それがお前らの最後の仕業になると肝に銘じろ。必ず、ヒッポグリフの方が先に動くのを待て」


ジュリアは恐ろしさのあまり側にいたハリーのローブを掴んだ。

反対側にはロンがハリーのローブを掴んでいる。


ドラコはそれを見て顔を歪めた。


「ヒッポグリフのところまで歩いて行って、お辞儀をする。そんでしばらく待つ。向こうもお辞儀を返したら触っていいっちゅー合図だ。返さなんだら、急いで下がれ。こいつらの鉤爪はかなり痛いぞ。そんで――誰が初めにやる?」


「僕やるよ」


ハリーが名乗り出た。

ハグリッドの初授業を成功させてあげたいし、成功すれば少しはジュリアの恐怖心が薄らぐかもしれない。



「ハリー、駄目よ。茶の葉を…忘れたの?」

「大丈夫、見てて」


ハリーは優しくジュリアの頭を撫でると、前に進んだ。



そしてハグリッドに言われたとおりの動作でヒッポグリフ・バックビークの信頼と許しを得て、ハグリッドに促されて背に乗り空へ飛び立った。




「ハリー、凄い」

その頃にはジュリアのヒッポグリフに対する恐怖心も少し薄らいでいた。



「いいぞ!ハリー!よくやった!」


降りて来たハリーにドラコ達以外の生徒が拍手を送った。


「凄いわ、ハリー」

「でも、やっぱり怖かった…。振り落とされそうだったよ。僕箒の方がいいかな…」



ハリーの言葉にジュリアはクスクスと笑った。



それを見て我慢の限界なのかバックビークのところにドラコ達三人が向かった。


「簡単じゃないか。ポッターが手懐けられるくらいだ、全然危険なんかじゃない」

「…ドラコッ」


ジュリアは嫌な予感がしてドラコの名前を叫び、駆けだしたときにはもう遅かった。


「そうだろ、醜い巨体の野獣め」

大きな鉤爪が光り、振り上げられた。


皮肉な愛情
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