「ッ…ジュリア…!ジュリア、」

ハグリッドの腕の中で静かに痛みに耐え、荒い呼吸をするジュリアの名前を必死にドラコは呼び続けた。


そのたびにジュリアが弱々しく笑うので、ドラコは泣きたくなった。



「マダム!急患だ!」


ハグリッドが医務室のドアを焦って乱暴に開けた。


「どうしたのですか!」

ハグリッドの腕の中のジュリアを見て校医が目を見開いた。


ジュリアは血だらけで痛みに耐え、ドラコは半べそですすり泣いていた。


「ヒッポグリフだ…。俺は侮辱しちゃならんと言ったはずだが…。なにか手違いで…この子はマルフォイを庇って…」


ハグリッドがジュリアをベッドに下ろしてしどろもどろに言った。


「ヒッポグリフ!?授業で扱うには危険すぎませんか!?」

「十分注意はしたつもりだった…」


マダムの剣幕にハグリッドの声はどんどん小さくなっていく。


「ハグリッド、怪我をした生徒の寮監の先生をお連れして。今すぐよ!」


ハグリッドはまたの言葉に大慌てで飛び出していった。

ドラコが居た堪れなくなってジュリアの手を握り締め抱き締めると、マダムはドラコに気付き、ジュリアから離した。


「怪我人に触れてはなりません!あなたも怪我したの!?」

「い、いえ、僕は違います…」

「その血だらけのローブはどうしたの!?」

「これは彼女の血です、彼女は僕を庇って…」


ズキリとドラコの手と足首が痛んだ。


「膝を擦りむいて…それにあなた捻挫してるわよ」

突き飛ばされた時に挫いたのだろう、でもそんな事ドラコはどうでもよかった。


「彼女の怪我に比べれば大した事ありません」

「いいえ!怪我に小さいも大きいもありません!そこに座りなさい!」


ドラコは側の椅子に座ってうなだれた。



僕のせいだ、

僕があんなくだらない事をしたから。


ジュリアは僕を庇って…


僕のせいでジュリアはー…


突き飛ばされた瞬間、何が起こったかわからなかった。

顔や身体に温かいモノが飛んできて、視界が赤く染まった。


凄い血の量だったー…。

きっとかなり痛いはずだ。

なのに、無理矢理笑って……僕の心配をするんだ。


何で僕なんか助けたんだ。


…髪だって、切り裂かれて、

ドラコはバラバラに切られたジュリアの髪をサラリと撫でた。

神様、ジュリアを助けて下さい。


僕はどうなってもいい…、

もう二度とジュリアに冷たく当たったりしない。


誰よりも何よりもジュリアを大切にする。


だから、

ジュリアをどうかを助けて下さい。


冷たい指先に温もりを
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