【同人誌サンプル】鳴苑吹奏楽部員がTRPGで遊ぶ本




※当同人誌はTRPGリプレイ本の伝統に則りまして、本文はすべて座談会形式でお送りしております。


<サンプル1>

 とある日の事、教室に神峰、刻阪、打樋、御器谷、音羽の5人が集まった。この集まりを命令した音羽の心はきゃらきゃら笑っていて、何やら楽しそうなご様子だが、神峰と刻阪はこれから何が起こるのか、一切知らされていなかった。
(ヤベェ、赤ちゃんメッチャ笑ってる……一体、何が始まるんだ?)
(特に楽器も用意してないし、練習じゃなかったらミーティングかな。でも、なんでこのメンバーなんだろう……)


音羽:それじゃお前ら、これからTRPGのセッション始めるぞ。

打樋・御器谷:わーーー(拍手ぱちぱち)

神峰:へっ、TRPG……!?

刻阪:そんな名前の曲ありましたっけ?

打樋:ホントオメェは音楽バカだな刻阪! セッションって、練習じゃなくてゲームな!

刻阪:ゲーム、ですか?

音羽:そうだ。TRPGは、みんなでテーブル(卓)を囲んで、おしゃべりでとダイスでゲームを進めていく遊びだ。キャラを作って、それになりきって即興劇していく感じだな。ちなみに、TRPGを遊ぶ1回のことを、セッションと呼ぶんだ。

神峰:うわ、なんかちらっと聞いた事はあるけど……難しそうスね。

御器谷:だいじょうぶ、ボクみたいなのでもなんとかなるから。楽しいよ。

打樋:とか言ってコイツ、結構やり込んでるからな! ルールよく知ってるしよ!

音羽:さすが「歩くTRPG事典」。

御器谷:ええっ、ボクが分かるのこのゲームだけだけど!

刻阪:このゲーム……「ソード・ワールド2.0(以下SW2.0)」っていうんですね。どんな感じで遊ぶんですか?

音羽:ああ、これは『ラクシア』っていう世界にいる冒険者になりきって、魔物──『蛮族(バルバロス)』って呼ぶんだが、そいつを倒したり、滅んだ文明の遺跡に潜って宝を探したりするんだ。まぁ、いわゆるファンタジーRPGだな。

神峰:へぇ! ファンタジーRPGならオレ結構好きですよ!

音羽:それはよかった。で、今日はオレがGMになって、お前らに冒険して貰おうと思ってる。

刻阪:じーえむ?

御器谷:ゲーム・マスターの略だよ。ボクらが冒険する為のシナリオを作ってくれたり、シナリオに沿って状況を説明したりとか、あとルールに沿っていろんな裁定をしたりしてくれるんだ。……つまり……

音羽:このセッションにおいては、オレが神だという事だ(ドヤ)

神峰・刻阪:!?

神峰:(ヤベェ、音羽先輩の赤ちゃんが笑ってたの、こういう事か!)

音羽:……お前ら、どうした? そんなに硬い顔して。

御器谷:音羽君は自分の振る舞いを振り返ってみたらいいと思うよ……。

音羽:(スルー)それじゃ、早速キャラシートを書いてもらおうか。

打樋 お、きたきた! これがいっつも楽しいんだよな!


◆わくわくキャラクター作成!


音羽:それじゃ、みんなキャラシは行ったか?

打樋:おう!

神峰:へぇ、これでキャラクター作るんスね。色々書く事あるみてェだけど……。

刻阪:でも、全部埋めるのも楽しそうだね。

音羽:いい心掛けだな。ひとつひとつ説明していくから、ちゃんとついてこいよ。まずは種族と、生まれを決めてくれ。

神峰:種族?

音羽:「SW2.0」にはいくつかの種族があって、それぞれ見た目や能力値に違いがある。今回はこのルールブックT・Uの改訂版を使うから、選べる種族は全部で10種類だな。

神峰:うわ、いっぱいあるんスね。決めるの大変そうだ。

御器谷:どんな技を使いたいかによって、ある程度絞れるよ。魔法を使いたいなら、長命種の「エルフ」、うさぎっぽい亜人の「タビット」、魔法で創られた人造人間の「ハイマン」あたりが得意だね。

刻阪:あ、僕魔法使いがいいです。せっかくのファンタジーですし。

御器谷:それじゃ、ルールブックTのここと、ここ、それからUのここだね。

刻阪:ありがとうございます。……タビットって、本当にウサギなんですね……。

音羽:ロールプレイでそれ言ったら、タビットはキレるから気を付けろよ。

打樋:神峰はどうすんだ?

神峰:オレは……(ルールブックぱらぱら)う、この「ナイトメア」って……。

打樋:あぁ、ソイツ結構強いぜ! 忌み子だって言われてる嫌われモンだから、ロールプレイムズイけどな!

神峰:(……オレ、出来そうな気がするけど)イヤ、やめときます。打樋先輩は?

打樋:俺かァ? オレはグラップラーで殴りてェから、前衛向きがいいんだけど……

御器谷:ボクは人間にしとこうかな……やっぱり種族特徴の[剣の加護/運命変転]は心強いから。

神峰:運命変転、ってなんスか?

音羽:種族特徴という、種族ごとに決められた力のひとつだな。人間は特に優れた能力はないんだが、ゲーム時間で1日に1回だけ、判定に使ったダイスの目をひっくり返す事ができる。死にかけた時とか、トドメ刺したい時とかに便利だぞ。

神峰:なるほど! じゃあオレも人間にします。運命を変えるってカッコイイですし!

音羽:そろそろ決まったか? じゃあ次は生まれを決めてくれ。生まれ表を見ながらダイス振ってもいいし、取りたい技能によって選んでもいい。

御器谷:じゃあ、神峰君から選んでいいよ。

神峰:え、ホントっスか!? じゃあ、やっぱり剣で戦うのがいいス! ファンタジーって言ったら剣士っスよね!

音羽:それならファイター技能だな。ならお前は傭兵生まれってことになる。生まれ表の数値をキャラシに書き込んでおけよ。そしたら次、同じく初心者の刻阪、選んでいいぞ。

刻阪:あ、ありがとうございます。魔法……と言っても、3つあるんですね。

打樋:ソーサラーの真語魔法、コンジャラーの操霊魔法、フェアリーテイマーの妖精魔法の3つだな! どんな魔法かは……ワリィ、御器谷!

御器谷:わ、分かったよ……ええっと、ソーサラーは攻撃と、周りを照らしたり魔力を感知したりみたいな、冒険の上で便利な魔法が得意だよ。コンジャラーは援護や補助魔法を得意として、あとは魔法生物を作ったり操ったりができる。フェアリーテイマーはその名の通り、妖精を呼び出していろんなことができる魔法だよ。

刻阪:そうなんですね、うーん……あまり難しいのは苦手なので、分かり易そうなソーサラーでいこうかな。

音羽:よしよし。そしたら次は能力値振ってくれ。キャラには「器用度」「敏捷度」「筋力」「生命力」「知力」「精神力」の6つのパラメータがあって、生まれで決まってる数値にダイスの目を足して能力値を決定する。これで決まる「能力値ボーナス」は各種行使判定に使うからな、高いに越したことはないぞ。



+ + + + +


<サンプル2>

音羽(以下、GM):というわけで、導入だ。冒険の始まりという訳だな。

神峰(以下、ショーン):やったァ! 楽しみス!

刻阪(以下、ハリー):よろしくお願いします。

GM:お前らはみんな、一緒に旅をしているパーティだ。お前らは新たな冒険を求めて、とある小さな町にやってきたところだな。

打樋(以下、トゥーリオ):お、最初からパーティなんだな? 分かり易くていいぜ。

GM:小さな町の名前はメルエルン。(がさがさと地図を描いた紙を出して)テラスティア大陸の西、花の国フェンディルのほど近くにあるな。すぐ近くには、魔道機文明の栄えた跡であるルーンフォークの里がいくつかあるぞ。
ショーン:ちょ、ちょっと待ってくださいスGM、いきなり分からねェ用語がいっぱい……!

GM:ああ、悪い。大事なのは魔動機文明とルーンフォークだな。『SW2.0』の世界では、今までに文明が3回滅んでいるんだ。その3回目に栄えた文明があった時代は『魔動機文明アル・メナス時代』と呼ばれている。この文明は『大破局(ディアボリック・トライアンフ)』とよばれる、蛮族……魔物のことだな、の大侵攻で滅んで、今はその300年後っていう設定だ。

御器谷(以下、ミシェル):魔動機文明というのはね、高度な魔法の力を道具に応用した文明なんだ。

ハリー:それで、ルーンフォークというのは?

トゥーリオ:ルーンフォークは魔動機文明に発明された人造人間のことで、PC(プレイヤーキャラクター)でも使えるぜ! ちなみにお前の種族のハイマンも人造人間だけど、ハイマンは魔動機文明の1コ前の文明、魔法文明時代に作られたヤツだな!

ハリー:なるほど、それは親近感湧くかもしれませんね。

GM:まぁ、今回ルーンフォークは直接出ないけどな。

プレイヤーたち:アレェェエエ!?

GM:まだ背景説明だ。覚えておいて損はないけどな。メルエルンという町は、魔動機文明の栄えた場所の近くにあるっていうのが言いたかったんだ。それで、新しい冒険を探しにきたお前らは、当然の如く、この町唯一の冒険者の店にやってきた。

ミシェル:あ、冒険者の店っていうのは、ギルドみたいなものだよ。仕事を斡旋してもらったり、ご飯が食べられたり、場合によっては宿を貸してくれたりもするね。

GM:さすが歩く「SW2.0辞典」、的確かつ簡潔な説明だ。冒険者の店の名前は『鈴の鳴る庭亭』と書いて、『リンギン・ガーデン』と読む。

ショーン:う、おぉお!!(興奮)

ハリー:わぁ、なんか恥ずかしいような、嬉しいような。

GM:店のドアを開けると、猫耳の三角巾をつけたドワーフ女子が「……なぁに、新入り?」みたいな目つきで迎えるぞ。

トゥーリオ:ね、猫耳の三角巾、だとォ?

ミシェル:ま、まさか……。

GM:彼女は冒険者の店の店主で、名前はメグリッタ。メグリッタはパーティの中にショーンを見つけると、おもむろに目を背け頬を染めた。

ショーン:へっ、オレですか!?

ハリー・トゥーリオ:邑楽(先輩)だぁぁ!!(爆笑)

ミシェル:恵、まさか君にこんなところで会えるなんて……(涙はらはらり)

GM/メグリッタ:っじゃない、あんたたち、この町初めてよね? 何の用?

トゥーリオ:ぶはっっ!!(腹抱え)音羽の声で邑楽のロールプレイとか反則だぜェ!

ミシェル:しかも、ドワーフの女の子……ボク、恵の小さいころを思い出してプレイする
ことにするよ……。



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サンプルは以上です。
ちょっとでも楽しそうな雰囲気が伝われば幸いです。

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