▼もう季節は夏になったマグノリア。あれからずっと塑琉奈は、夕方まではギルド。夕方過ぎには秘密の場所へ向かう。
「なあなあ塑琉奈ー、俺このクエスト行ってみようと思うんだー」
「あい!初めてのクエストだよ!」
「へぇ、そっかぁ。ナツも遂にクエスト出発なんだねー!気を付けてね」
「うん!」
クエスト状を手に塑琉奈に駆け寄るナツに、笑顔で彼の頭を撫でる。
「あ、ズリィぞナツ!塑琉奈、おれも!」
「グレイは早く服着なよ!」
「カナ諦めろ、あれはもうクセだな」
「あはは、お前ら本当元気だよなー!」
ナツを始めに、グレイ、カナ、エルザ、っと塑琉奈の周りに集まる。そして皆の会話で笑顔溢れる。ギルドでは笑顔絶やさず皆の中心にいる塑琉奈
▼「ラクサス、最近どうだー?」
「…別に」
「ひゃー!夏なのにお前だけ冷てーな」
「うるせぇな、あっちいけよ」
「え、俺がうるさいの今更じゃね??」
「……。」
相変わらず塑琉奈からラクサスに絡みに行くも、ラクサスからは冷たい返事だけ。
「あんまり怖い顔してるとフケるぞー!」
彼がこちらを睨む度、塑琉奈は笑って、彼の鼻をつついて側を離れる。それだけなのに、今の二人には充分な触れ合いだった。
ラクサスにとっても、
塑琉奈にとっても。
▼ご苦労なこった、そうイワンが不敵に笑う。自分の目の前には塑琉奈。
「毎日毎日、ちゃんと来てるなんてよ、塑琉奈ちゃんもマニアックだねぇ」
「……」
何度腹に拳を打たれただろう、何度手足を踏まれただろう、覚えてない。
「そんなに此所は大事なのかよ、ハハ、馬鹿みてぇ!」
ああ、そうさ。とても大事だ。アンタみたいな屑には判らないだろ。判らないなら大人しく俺を殴ればいい、潰せばいい、殺せばいい
「(それで此所が、周りが、護れれば、なんでもいいや…)」
▼ある日から、ラクサスは疑問を抱いていた。そう、マグノリアが夏の季節になった時からだ、塑琉奈の服装が何故か長袖とジーパンになっていた。
長年の付き合いもあってか、「(いつもならTシャツにスパッツ、だったよな)」っと直ぐに塑琉奈の違和感に気付いていた。
以前にミラが「おい塑琉奈ー、なんでんな暑苦しい格好なんだよ。見てるこっちが暑いぞ」っと言うのに「俺はお前たちみたいに綺麗に焼けないの、だから日焼け止めー」って笑いながら言ってたのを、凄い耳に残っている。
だが、それに何かを感付いていたのは、ラクサスだけではなかった。
▼各々疑問が交差する中、遂にラクサスは今まで行けずにいた、秘密の場所へ行こうっと彼は思いきった。
「(きっと、怒るだろうか)」っと内心申し訳ないと呟きつつ、ラクサスはもう体が覚えている秘密の場所への道を歩く。
時間は夕方を過ぎた20時頃、普通の店ならもう片付けをする時間だ。夏季のせいでいつもは暗い道も、まだ明るく辺りが見渡せる。
「(本当は、塑琉奈を傷付けた以上、彼処に行く権利なんてねぇんだ)」
それでも向かっているのは、彼女に対して、不安と疑問が交差するから。
「(嫌な感じがする)」
根拠はない、只の直感だった。
そして、もう見慣れたあの場所に辿り着く。そこには、やっぱり塑琉奈がいた
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