※続き、暴力表現アリ


▼「なんで、此所にっ…が!?」

彼の姿に驚き声を発するよりも先に、彼の手が塑琉奈の首を掴む

「ぐ、あ…ぁ」
「塑琉奈ちゃんよォ…よくもあの時は邪魔してくれたよなァ?」
「じゃ、ま…?何言って…」

塑琉奈の首に手の力が籠る

「とぼけちゃってー、あのバカ息子の暴走止めなきゃ、今頃ギルドは潰せてたのによぉ、」

しゃしゃり出やがって、そう吐き捨てるように言った後、塑琉奈を持ち上げて地面に叩き付けられる。

「んぐ…う、ぁあ!」

そのまま思い切り腹を蹴られ、塑琉奈の体は一回転

「初めは泳がせていいと思ったんだけどよ、お前もう邪魔だよ」

「いた、ぐ…!うぅ…!」

「せっかくラクサスちゃんが強くなって、俺のために働いてくれるって計画なのに、お前のせいでっ!あいつはっ!全然っ!力を使わなくなりやがって!!!」

髪を乱暴に掴み、塑琉奈を無理やり立ち上がらせてひたすら彼女の体に拳を打つ。


▼「…お前のために、働く…?ラクサス、が?」
「そうだよ、そのためにラクリマを埋め込んだんだ」
「っ、はは…。そっすか…」
「何がおかしい?」

下唇を噛み、痛みを耐えている塑琉奈が突然口を開く。そして何故か彼女には笑みが。 それを気に食わないイワンからの張り手

「ー…!アンタ、ラクリマ埋め込む相手間違えたね、そんなに人形が欲しければ先に調教すればよかったのに、」
「あぁ?!」
「あいつを、ラクサスを、自分のために働かせるなんて無理だよ。」

確かに、ラクサスは父親であるアンタを少なからず慕ってる、父親であること、強い魔導士だから、判る。

でもな

「ラクサスのが、お前より優しいもん。優しいのにお前のために働くもんか…!」

ごめんねラクサス、お前の父親に酷いこと言ってる。許してね。でも君を馬鹿にされて、怒りが収まるもんか


▼「チィ…!」
「っ!」

何度も打撃を体に打ち付けられた後、また地面に叩き付けられる。それによって体には無数の擦り傷と痣が出来る

「お、良いこと思い付いちゃった。」
「は…?」
「此所、ラクサスと二人だけの秘密の場所なんだろ?なあ?塑琉奈ちゃあん?」
「…!?」

イワンの言葉に、塑琉奈の顔が一気に真っ青になる。

「この場所、壊されたくなかったら、毎日此所に来いよ。おっと、ギルドの奴等には言うなよ?そしたら直ぐに壊してやる」
「ふざ…けんな…」
「はあー?聞こえねーなー?」

この場所はただの秘密の場所じゃない。
今までアイツが、葛藤や、苦悩や、その歪みすべてを、此所で一番にそれらを見つめ直し、安らぎを求めてくる、大切な場所。

ラクサスの成長を後押ししてきた場所。


▼「何だったら今からでもいいんだぜー?」

そうこうしてる内、イワンの周りから魔力が疼き出す。バラバラバラバラ、と紙が辺りを舞う。

「…やめて」
「はあん?」
「分かった、から…やめて」
「やめて『ください』だろー?あ?」
「ぐっ…やめて、ください」

苦悩の末、土下座の形を取った塑琉奈から絞り出た言葉だった。イワンはそれに気を良くし、何度も何度も塑琉奈の頭を踏みつける。

「物分かりいーねぇ、さすが塑琉奈ちゃん。じゃあ明日もよろしくねー」
「………。」

そのまま飄々とした形で去っていくイワン。 そして、何もなかったかのように、塑琉奈だけが残された。

「(護んなきゃ…)」
「(ラクサスの、俺の、大切な場所なんだ)」

そして彼女は腫れた目で空を仰ぐ。夜なのに空はまだ明るく、綺麗な海の青。そんな、もう夏を迎える時期の出来事だった



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