▼「塑琉奈ー!」


ヒラヒラとまた仮装をした子供たちが俺に向かって元気よく手を振る。ほらまたやってきた。

えーいっとパタパタ可愛らしい走り方で俺の方へ一直線。そして後ちょっと、という辺りから二人の子供が勢いよく俺に向かってダイブ。俺はそれを、おっと、と何とか抱き寄せてキャッチ。

今日はいっぱい抱きつかれて幸せだなぁ。子供持ったらこうやって来るのかな、なんてふと思う。


「元気だなぁお前ら」

「えへへー」


俺の方へやってきた次の子供たち、それはいつも近所にいるヤンチャ盛りの男の子。よく俺やラクサスが一緒に遊んだり、追いかけっこしたり、と、一番面識のある子達だ。その子達も今日は随分と可愛らしい、悪魔やお化けの格好でにんまり笑ってる。

スリスリと俺の体に擦り寄る子を傍らで、「塑琉奈の仮装こえー!」なんて指差しして笑ってたり、相変わらずの元気とはよく言ったものだ。その子達の左手には勿論、カボチャの入れ物にごっそりとお菓子が入っていて


「よしお前ら、俺に言うこと分かってるだろ?」

「えー、どうせ塑琉奈、毎年お菓子持ってるからつまんないんだよねー」

「なんだって!?!」


だって悪戯出来ないじゃん。っとジト目で俺を見やり、少し口を尖らせる男の子。てっきりお約束の言葉がくると思ってお菓子やる気満々だった俺の気合いが一気にくじかれて、はえ!?っと半笑いと共に間抜けな声が漏れた。

お菓子より悪戯優先って、お前ら本当にヤンチャだな!


「そういうのは可愛い可愛い大好きな女の子にやりなさい」

「えっ、塑琉奈可愛いよ」

「大好きだよ?」


ぐっ!今すんげぇキュンってなった!すんげぇキュンってなった!何でそんないけしゃあしゃあと言うんだ、嬉しくてときめいちゃったじゃねーか!!

きょとんとした顔でサラリと殺し文句を言う子と、引っ付いてる子から見上げたままの大好き、それだけで俺の胸が不覚にも跳ねる。

ち、ちくしょう、俺もうお前ら好きだわバカヤロー。ラクサスにさえそんなサラリと言われたことねぇよ!!!


「というわけで」

「Trick but Treat!お菓子くれでも悪戯するぞ!!」




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