▼マグノリアの街並みはいつもよりも、可愛らしいカボチャと黒猫、そして蝙蝠やお化けなど沢山の置物や飾り付けで彩られていた。

秋特有の暖色の収穫物や植物、それがより飾りに雰囲気をもたらす。その中で、至る所に置かれている型抜きしたカボチャには、色んな顔が描かれてどれも皆楽しそうな笑みを浮かべていた。

そんなカボチャたちは口から明かりを灯し、街中をキャッキャッとはしゃぎ歩いていく、各々可愛らしい仮装をした子供たちを次々と見送っていく。


▼「塑琉奈ーお菓子ー!」

「ちょーだいー!」


そんな子供や大人たちも楽しく心を踊らせる行事、ハロウィン。マグノリアでは街全体が子供たちに渡すため、お菓子があちこち飛び交っていく。そんなマグノリアを徘徊している一人、仮装をした塑琉奈に子供たちが笑顔で飛び付いた。


「ストレートだなお前ら。ちゃんとした言い方しないとあげませーん」

「えー」

「どうせ持ってるだろー」

「それとコレとは話が別です」


飛び付いた子供たちの頭を一人一人軽く撫でながら、塑琉奈はブーっと腕にバッテンを作ってダメです、と子供たちに口を尖らせる。子供たちはそれを見て、不服そうに塑琉奈と同じよう口をブーっと尖らせる。

だけどそれもほんの少しの間だけ。直ぐにはニマッと子供たちと塑琉奈は互いに揃って笑った。そして塑琉奈からの、せーのっ、と掛け声と共に、可愛らしい声が響いた。


「「Trick or Treat!!
お菓子くれなきゃ悪戯するぞ!」」


▼毎年ハロウィンになると、妖精の尻尾でも、皆で仮装をして互いにお菓子の渡し合いや、歌って踊ったり騒いだり、そんな日常茶飯事に少しプラスされたものになっている。

そして妖精の尻尾では、自らお菓子を持ち歩き、マグノリアを徘徊して子供たちにお菓子を配ることもよく行うようしたんだ。

というか今までそれがない時は、ギルドに子供たちがよく押し寄せてきたのがキッカケ。ましてやマグノリアの子供たちは俺達のことをよく知ってるから尚更格好の獲物だった。


「(しかもどの子も皆、顔を知ってるからなー)」


俺なんかはよく子供たちと遊ぶことや話すことがあったから面識がたくさんあって、俺も子供たちも互いに顔を知ってるから集中砲火されたもんだ。

まあ、子供に囲まれるのは幸せ以外にないけどな。

そんなこんなや、お菓子の交換やら交流やらたくさんの楽しみを互いに共有出来るよう、俺はマグノリアを仮装して徘徊しているのだ。


▼ん?ラクサス?アイツはどうしたかって?

アイツは見た目が金髪ゴリラのくせにシャイだからな!

子供に囲まれるのは柄じゃねぇ、だの、俺がお菓子持って歩く姿想像出来るか?なんて聞かれたから「おう!まっっったく似合わないし、むしろ逃亡したゴリラがお菓子奪ったようにしか見えないな!!ぶぶっ!」って笑ってやったよ!腹抱えて!

…その後、頭上に星が舞ったけど。

そういうわけで、ラクサスは今ギルドで待機してるのだ。ギルドにいても他の仲間達に絡まれてそうだけど、アイツたくさん上着に飴玉突っ込んでたからな、問題はないだろ。

ごっそり飴玉入っててパンパンなポケットの上着を羽織ったラクサスを見て、また噴き出しそうにはなったんだけどこれ秘密な!




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