▼いつだって俺たちは、互いを分かり合っていた。理解していた。心を通わせていた。
…けど、そう思っていたのは俺だけ?
俺だけの願望がその言葉たちを並べる。
違うよね?そうであってほしい、と言わんばかりに拒絶を並べた。
▼彼女のためなら、俺はなんだってなってやろう。悪魔にだってなってやる。
俺のこの手で、お前が、塑琉奈が触れられるなら、何も要らない。
なあ、だから笑ってくれよ。
どうして、頬を撫でる度に、お前は泣きそうな顔をするんだよ。
▼静かにラクサスの手が俺の手を握った。もう今では、俺の手をすっぽり覆ってしまう程に大きな彼の手。
いつもなら、その手で握られれば、じんわり暖かくて、心地いい微睡みに包まれるのに、
今は何故だが、握ってくれた彼の手に震える自分がいた。
「ねぇ…ラクサス」
「…なんだよ」
ああ、俺きっと変な顔してる。だって、ラクサスが心配した面持ちでこっちを見てる。瞳をゆらゆら揺らして
それが、更に俺の不安を煽った
「離れないで…?」
必死に紡いだ言葉は、震えて聞こえているか判らない程に小さくて、いっそ「(聞こえなくたっていい…)」っと、ただ、口に出せればなんて、また自分の願望ばかり。
「…当たり前だろ」
すうっ、と彼の大きな手が、今度は俺の涙を拭い、頬を撫でる。
そして、聞こえてたんだろうか、いつもより低い声が、俺の中で谺した。
ごめんね、ごめんね
深い意味などないのに、気が付けば不安になる俺を許して
揺らぐラクサスの瞳を見つめる。
すると、ゆっくりと彼の顔が近付いていく。
俺はそのまま、彼からの優しいキスを貰った
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