▼ラクサスの瞼から頬までを走る傷。その傷は彼が小さい頃に付いた電撃の傷。
今では痛みも感じないそれは、まるで彼の右半身に電撃が満ちていると象徴させるものになった。
「…痺れちゃうかな」
「あん…?」
恐る恐る、彼の頬に触れてみる。今までは意識してなかったそれは、気にすることなく触っていたのに。意識すればするほど、黒こげにされてしまうんじゃないか、と思わず指が震えた。
ゆっくり、彼の頬に刻まれた稲妻を指でなぞる。けれども、こちらに電撃はやってこない。当たり前か…と変に意識した自分に苦笑いを溢した。
「やってこないなー…」
「何がだよ」
「電撃」
ラクサスは、はじめは不思議そうに俺を見ていたけれど、なぞる指で答えるよう彼は拒むことなく、目を細めた。
「ここ触ったら放電するのかなー、なんて考えてた」
「しねぇよ。何言ってんだか」
「あははごめん。ごめん。」
俺の手のひらに擦り寄るように、自ら頬ずりをしながら、バカみてぇ、と言ったような顔で俺を見るラクサス。そんな仕草をする彼を正直、猫に見えてしまった
けれども、彼はそんな顔を直ぐに消して、にんまりと口を三日月のように動かして笑う。
「俺はいつもお前に電撃ばかりしかもらってねぇけどな」
そうして、ちゅう、とわざとらしくリップ音を響かせて、ラクサスはにんまり笑ったまま、俺の手のひらに口付けを落とした。
「え…、何それドユコト?」
キョトン、キスをされた手を宙に浮かし首を傾げれば、まん丸三日月のように裂けた彼の口は途端に不満げに動く
「…お前ってホント、馬鹿だな」
「何をーーーー!!!??」
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