はつバトル



ヒコザルが私の肩からバトルフィールドへ降り立つ。
対するヒカリちゃんが選んだポケモンは……。


「ナエトル!出番よ!」


ヒカリちゃんが選んだのは初めて会った時も連れていたポケモン『ナエトル』だ。

先程ナナカマド博士に、ポケモンと同時に貰ったポケモン図鑑を起動してナエトルについて調べる。


「くさタイプなんだ。ということは、ほのおタイプのヒコザルとは相性が悪いって訳ね」


図鑑をバックにしまって、指示待ちのヒコザルを見つめる。
…・…この子はバトル好きなのかな。


大体の子は初めてのポケモンバトルに、何すれば良いか分からないと言いたげにこちらを見る子が多い。

特に野性で育った子ではなく、ブリーダーに育てられたポケモンや旅の途中に孵化したタマゴから生まれたポケモンはバトル慣れしていない子が多いらしい。

カントー地方を旅した時、そういうポケモンと何度か手合わせしたことがある。


この子は何か競争する事が好きなのだろうか。
まだ出会って間もないから、このバトルが終わった後、この子と向き合う時間を作ろう。


「先手必勝!ヒコザル、“ひっかく”攻撃!」


私の指示にヒコザルは返事をした後、ナエトルに向かって走り出す。


「ナエトル、“からにこもる”!」


ヒカリちゃんの指示で、ナエトルが“からにこもる”を使った。
ヒコザルの“ひっかく”は、あまりダメージにはならなかったようだ。ヒコザルは攻撃した反動を利用して、回転しながらこちら側に帰ってくる。


「なるほど……。図鑑の説明通り、身軽なのね」


図鑑で見た説明文を思い出しながら、次の指示をどう出そうか考える。

ナエトルは見たところ、防御よりのポケモンに見える。
ヒコザルは素早さが高いポケモンで、先制を取りやすいのはこちら側だろうか。

ヒコザル、君をどう生かせてみせようか。


「ナエトル!たいあたり!」


ヒカリちゃんがナエトルにそう指示を出した。……チャンス!


「ヒコザル!そのまま前進!」


ヒコザルは私の指示に疑問の様子を見せることなく、こちらへ向かってくるナエトルに突進していく。
タイミングを外すな。……よし、今だ!


「ヒコザル、ジャンプ!」


ナエトルの攻撃が当たる寸前に、ヒコザルはジャンプした。
……よし、思った通りだ!


「今よ!ヒコザル、“ひっかく”攻撃!」


私の指示にヒコザルは返事をした。
攻撃が当たらず急停止したナエトルに、ヒコザルの攻撃が直撃した。


「ヒコザル!とどめの“ひっかく”!」


ヒコザルの技は命中し、ナエトルにダメージを与えた。


「ナエトル!?」


ヒカリちゃんがナエトルを呼ぶ。
…が、ナエトルは返事をすること無く、目を回してその場に倒れてしまった。

ナナカマド博士がナエトルの様子を見る。


「ナエトル、戦闘不能。勝者、ナマエ」


ナナカマド博士からそう伝えられた。
……勝った?


「ぅわっ!?」


勝利を実感できずにいると、何かが私の胸に飛び込んできた。
その正体はヒコザルだった。

勝ったことが嬉しいのだろう。ニコニコと可愛らしい笑顔をこちらに向けている。


「凄いです、ナマエさん!」

「ありがとう、ヒカリちゃんっ」

「うむ、ポケモンの特徴を理解した良いバトルだった」


ヒコザルを腕の中に収めていると、ヒカリちゃんとナナカマド博士が近寄ってきた。
二人の方へ向き直っている間に、ヒコザルは私の肩へ移動する。


「ありがとうございます博士。……私は進んでバトルする方ではないのですが、幼馴染の影響でしょうか。バトルに関して少し知識があるくらいです」


博士にそう言いながら、二人の幼馴染みを頭に浮かべる。
シンオウ地方ここに来る前に見送ってくれた幼馴染みの一人を思い出す。

……・レッドからくっついて来たのは初めてだったような?グリーンは何かとよくくっついてきていたけど。肩組んだりとか。


「なるほど!ナマエさんの強さの秘訣は、その幼馴染のお陰なんですね!」

「そうなの…かな?」


ヒカリちゃんの言葉にそう答える。


「……この地方にもジムはある。挑戦してみるのはどうだ?」


ナナカマド博士の言葉に悩む。
私は別にバトルが好きでは無い。でも、嫌いでも無い。

カントー地方で出会ったポケモン達は戦う事が好きな子ばかりだったので、レッドとグリーンの存在もあり、ジムに挑戦したのだ。


「……ヒコザル、貴方の意見を聞かせて?」


ヒコザルに問う。
私はポケモンが第一だ。ポケモンが望む事を優先して叶えたい。

彼らだって生きているんだ。……道具なんかじゃ無い。



思い出すのは故郷……カントー地方で悪さをしていたある組織のこと。
私はレッドや自分のポケモン達に守られてばかりだったな。

怖くて何も出来ない主を守ってくれるポケモン達の背中が、凄く格好良かった事を覚えている。


だけど、全員がそうでない事を知っている。私のポケモン達が勇敢だっただけだ。
だから、バトルが好きな子がいれば抵抗のある子だっている。


ヒコザルはどう返事をする?





2021/09/23


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