対 戦国伊賀島中
side.風丸一朗太
豪炎寺のボールを奪い、勝負を申し込んできたのは、今日の対戦相手である『戦国伊賀島中』の選手だ。
目の前に現れた人物……『霧隠才次』と名乗った人物は辺りをキョロキョロと見渡し始めた。
「苗字名前はいないのか」
霧隠から苗字の名前が出た。
豪炎寺に勝負を断られた霧隠は次に苗字に興味を示した。
しかしここに苗字はいない。
彼奴は一度きりの助っ人として現れたのだから。……俺と同じような立場で。
「彼奴は一時的な助っ人だ。……此処には来ない」
豪炎寺が苗字がいない理由を霧隠に話した。
彼奴は今日の試合に出場しない所か現れる事もないし、そもそも今回のフットボールフロンティアに二度と現れる事もないだろう。
「苗字名前ならば俺と同等……否、俺以上に速いだろう。是非とも手合わせをしたかったんだがな」
彼奴の速さは俺も霧隠と同じ意見だ。
秋葉名戸学園との試合で見た苗字のプレー姿。
アクロバティックな動きと、あの動きを可能にしている身体能力。あれだけの速さで走ってながら息の乱れは見られなかった。
……陸上部にいたら、間違いなくレギュラー入りしている。
「ふんっ、俺に勝てないと思って苗字名前は逃げたのか?聞いた話では、怪我でサッカーを辞めていたらしいじゃないか。……なら、あの試合で見た姿は俺の思いすぎだったか」
……恐らく、霧隠は苗字をバカにしているんだと思う。
悔しいが、彼奴は俺より速いだろう。
豪炎寺と苗字をバカにされたのが嫌だったのか、円堂が「その勝負、俺が受ける!!」と霧隠に言っていた。
「冷静になれよ、円堂。此処は相手にしない方が良い」
そう言ったが、円堂は納得いかないようで不満そうな表情を浮べている。
その時、視界にある人物が目に入った。……宮坂だ。
そうだ、今日の試合は彼奴が見に来ているんだ。
「1番足が速いのは俺だ。……俺がやる」
後ろから円堂が、「今、相手にするなって自分で……」と聞こえたがスルー。
霧隠の所まで歩くと「誰だ、お前は?」と尋ねられた。
「お前に名乗る名はない」
先程、向こうが豪炎寺に言っていた事をそのまま口に出す。
「ふんっ、叩きのめしてやるよ」
霧隠が鼻で笑う。
こうして、試合前にどちらが速いかという勝負が始まった。
2021/02/21
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