雷門中サッカー部との出会い



先程逃げ出した3番君を見つけられたのか、戻ってきたサッカー部。あ、いたいた。身体が大きいから見つけやすいね。

グラウンドで並んでいる選手達を眺めながら、イヤホンを外し携帯を上のジャージのポケットにしまう。一応持ち込み禁止なんだよね、携帯。まあ堂々と持ってきているわけだけど。


「……あれ、春奈だ」


ベンチに見慣れた姿を見つけた。そこには友達の『音無 春奈』の姿があった。なんでベンチに座ってるんだ?
……ああ、新聞部の仕事か。手帳を片手にマネージャーさんへ何か聞いてるみたいだし。


「さあて、帝国の実力はどんなものかな?」


両チームの選手が各ポジションに着く。そして、試合開始のホイッスルが鳴り響いた。
雷門中サッカー部からのキックオフで試合が始まった。


「……ふむ」


9番の人にボールを渡し、再び11番の人がボールを持つ。
ボールを奪おうとした帝国側の選手2人のスライディングを躱した、11番の人。
11番の人が2番の人にパスを出した所で僕の口から出てきたのは溜息だ。


「……あれで勝った気になってるのか、うちの学校のサッカー部は」


11番の人がシュートをしている姿を見て、僕は思っていた事を口にした。
8番の人が6番の人……間違えた。11番の人に向かってパスを出す。
分かるんだよなぁ、明らかに6番にパス出してないのが。だって位置高いし、目線が完全にそっちに向いてたし。
パスされたボールを11番の人はそのままゴールに向かって蹴った。
実況が「決まったーッ!!」と言っているが、


「打つ場所分かりやすいし、そもそもノーマルシュートじゃん」


僕が口にした瞬間、帝国側GKがボールに少し触れてコースを変え、前転しながらボールをキャッチした。
周りから残念そうな声が聞こえるが、あれはどう見ても取られるボールだ。


「弱いな、うちの学校のサッカー部」


GKから恐らくキャプテンであろうあの選手に渡る。チームメイトに何かを言った後、帝国のキャプテンは前に立っていた9番の人へとパスを出した。
9番はそのボールをそのままゴールへと思いっきり蹴った。


「!」


キャプテンさんは反応できなかったのか、ボールがお腹に直撃した。そのままボールと共にゴールへ。
ホイッスルが鳴り響き、帝国へ1点入ったことを知らせる。


「ふーん、なるほどね」


帝国学園サッカー部。それなりに実力はあるって訳ね。


「しっかし、あのボール反応出来なかったか〜」


倒れているキャプテンさんを見て、思ったことを口に出す。キャプテンさんにボールが直撃したのは偶然だ。たまにそういう事故はあるし、サッカーやってるなら多少覚悟するものだ。

___最初はそう思ってたんだ。


時間が流れる。
試合の流れは完全に帝国に向いている。というより、雷門が手も足も出ないっていうのが正しい。……だけど。


「あれ、完全に態とだよね」


帝国の選手達の行動に目を細める。何回か雷門の選手に向かってボールを蹴る、という行動を見せた帝国の選手。それに為す術も無いまま、前半は終わってしまった。
10-0というスコアで。


「………後半はどうなるのかな」


そう呟いて僕は校舎に向かって歩き出した。

……僕の嫌いな”あの光景”にならないで。そう願いながら。





2020/12/27

加筆修正 2022/05/06


prev next

戻る














×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -