雷門中サッカー部との出会い



「燃えてきたーッ!! 皆、一週間の成果をこいつらに見せてやろーぜ!!」


帝国学園サッカー部のキャプテンを指しながら、我が校のサッカー部のキャプテンは自分のチームメイトに向かって元気に声をかけた。どうやら実力差に絶望していた訳ではなかったらしい。

というより、特訓したんだ……。テスト勉強とは訳が違うんだし、ほぼ付け焼き刃じゃん、それ。この試合のために部員集めたのなら尚更。


「……へぇ、なるほど。そういう人なんだ」


自分たちのキャプテンの声に嫌そうな顔を浮かべているチームメイト。
……面白い人だな。普通、あまりの実力の差を見せつけられたら逃げ出すか、臆するはずなのに。キャプテンさんだけは違うみたいだ。

強かろうが弱かろうが関係ない。きっとあの人は純粋にサッカーを楽しむ人なんだろうね。だから実力差を見せつけられても、怯える所か興奮している。あれは間違いなくサッカーの事が好きな人の顔だ。


「でも、あなたの熱意は伝わってないみたいだよ?」


……丁度今、僕の横を通って行った彼とかね。

見たことあるような大きな身体をした男子が校舎へと逃げていったけど、まあ僕には関係ないし。

逃げ出した3番君を横目で見送った後、改めてイヤホンを片耳に付けた。携帯を操作して、お気に入りの曲を流してグラウンドを見る。

するとまたあの人と目が合った。


「……また見てる、あの人」


帝国学園サッカー部のキャプテンは、また僕を見ていた。僕と目が合った瞬間、別の所へと視線を向けてしまったけど。

流石に2度も目が合ったら気の所為とは言えないよね。絶対わざとだよね。……いや、もしかしたら本当にたまたまだったのかも?

まあいいや。
とりあえず今の雷門の状況はどうだったっけ。


「えっと、さっき1人抜けて9人……で? 今来た明らかに運動できなさそうな眼鏡の人いれて10人……か」


10番のユニフォームを着た眼鏡の人、僕には運動出来なさそうに見えるんだよぁ……。というより、いつになったら試合が始まるのやら。

少し呆れながら、先程逃げた3番君を探しに行くのだろうサッカー部達を横目で見送った。


「………静かだなぁ」


イヤホンの音量はそこまで大きくない。そもそも片耳にしか付けてないし。
だから聞こえたんだ、帝国学園サッカー部の会話の内容が。


「……転校してきた選手?」


静まり返ったグラウンドから聞こえた内容。帝国学園のキャプテンは確かに”転校してきた選手”と言ったのだ。
転校してきた選手って、まあ間違いなくサッカー選手って事だよね。当たり前か。

その転校してきた選手が、帝国学園が雷門中に練習試合を申し込んだ理由なのか?
一体誰のことだろう。有名な人なら噂が出ても可笑しくないはずだ。

……そんな噂がないのは、雷門中がサッカーとは無縁すぎるからなのかな。そうだろうな。だって、僕がサッカー部があったこと知らなかったくらいだし。


「サッカー部にいるとは思えないな。……さっき顔見たけど、なんかぱっとしないし」


こう、なんて言うかな……明らかにサッカーできますって感じの人。まあ顔で決めるのは良くないか。でも、サッカー上手い人というか、試合経験ある人なら少しくらいその雰囲気あると思うんだけど。帝国学園、見る目がないんじゃない?

そう思いながら、僕はもう片方の耳にもイヤホンを付けた。……あ、1曲目が終わった。





2020/12/26

加筆修正 2022/05/03


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