雷門中サッカー部との出会い

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ハーフタイム。
名前が去った後、雷門中サッカー部はベンチでぐったりとしていた。大きすぎる実力差に体力を消耗しきっているようだ。


「どうなってんだ、あいつら……。誰一人息が乱れてないぜ?」

「そりゃそうさ。だって走ってないからね」

「僕ら、ずっと遊ばれてるって感じですよ……」

「クソッ、このまま終わってたまるか! 後半は奴らを走らせて消耗させるんだ!」


チームメイトの発言を受け、雷門キャプテンが後半の作戦を告げる。が……


「消耗って……無理でヤンスよ。もうヘロヘロでヤンスから」

「あぁ……俺ももう走れない……」

「なんだなんだどうした? まだ前半が終わったばかりじゃないか!!」

「後半もやるんスかぁ? やるまでもないッスよ」

「やっぱりこの試合、無茶にも程があったんですよ」


そもそも相手の体力を消耗させる前に自分達が倒れてしまう。現に今、会話するのもやっとなほどなのだ。そして、チームメイトは完全にやる気を失ってしまっている。そこを指摘する雷門キャプテンだが、残念ながら響いていない様子。



「何を言ってる!! まだやるぞ!! 勝利の女神がどっちに微笑むかなんて、最後までやってみなくちゃ分からないだろ!? なぁ!!」



雷門キャプテンは諦めていなかった。それは純粋にサッカーを愛しているから、試合を楽しんでいるから言える言葉でもあった。しかし、現実は好きでは片付けられない状況で。

そんな様子を高い位置から見ている一人の女子生徒と男性がいた。


「お嬢様、前半までで『気になること』というのは分かりましたか?」

「彼らは何かを待っています。……何かを」


女子生徒が使用している小さな双眼鏡の先には何を見つめているのか。それは彼女の身が知る。


「奴らはまだ動かないか」


場面が変わり、帝国学園が雷門へ来校した際に乗ってきた船。
催促の言葉にも受け取れる発言をしたのは、帝国学園の監督である『影山 零冶』だ。その視線はサングラスで分かりづらいが、恐らく彼の視線は船の下に集まっている集団……自身が率いる帝国学園の選手達だ。


「ご安心を。後半では必ず……」


影山の言葉に返事をしたのは、帝国イレブンを率いるキャプテン『鬼道 有人』だ。ゴーグルで目元は見えないが、口元はニヤリと笑みを浮べていた。まるで何かを企んでいるかのような表情。影山の言葉を受け、彼は一体何を思い着いたのだろうか。


「集まって! エンド交代、後半戦を始める!」


審判の声がグラウンドに響く中、一人の少女が慌てて校舎から出てきた。


「こ、これなら可笑しくないでしょ……!!」


息を切らしながらそう言った少女……名前は、先程のジャージ姿と違い、制服を着用している。どうやら着替えてきたらしい。さらに下ろしていた髪は、赤いリボンがついた髪留めで一つに結んでおり、制服を着ているからなのか先程と比べると女子らしく見える。

どうやら、鬼道が偶にチラチラと自分を見るのが気になっていたようで着替えてきたらしい。……何故彼女は先程までジャージ姿だったのか。謎である。その理由を知るのも彼女のみだ。


「危ない危ない……。間に合ったぁ……」


いまだに軽く息を切らしている名前は、キョロキョロとグラウンドを見渡す。グラウンドには既に選手がポジションに着いていた。試合開始までもうすぐだ。


「……さぁ、後半戦の始まりだ」


名前がそう言ったのと同時に、後半戦開始のホイッスルがグラウンドに鳴り響いた。





2020/12/27

加筆修正 2022/05/06


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