光と闇
「やったぞー!」
円堂さんの言葉に続いて「やったぞー!」と声があがる。
僕はそれを聞きながら水を飲む。
……何回だよこのやり取り。
どれだけやれば気が済むのだろうか、この人達は。
「俺達はっ、優勝したぞー!!」
円堂さんの言葉に「優勝したぞー!!」とオウム返しするサッカー部のメンバー。
「地区予選を突破しただけなんだけど……」
ま、あの最初の光景からしたら、現実味がわかなくて当然かもね。
そう思いながらカウンターに置いてあるトロフィーを見る。
現在、僕は雷雷軒にいる。
一度試合に出ただけの僕を、彼らはこの打ち上げに招待してくれたのだ。
……だが、僕は今座っている場所に不満がある。
「なんで僕の席は此処なんだ……!」
「お前が来るの遅かったからだろー?」
今僕は四人席に座っている。
一緒の席に座っているのは半田さん、目金さん、『影野 仁』さんだ。
半田さんが僕に呆れたようにそう言うが、僕は不満で仕方ない。
「僕は雷雷軒の常連客なんだぞ!?いつもはあの席なのに……!!」
そう言いながら僕は、知らぬ顔で餃子を食べている豪炎寺さんを指さす。
今豪炎寺さんが座っている位置は、僕の特等席なんだ!!!
「いい加減、機嫌直して下さいよ」
「豪炎寺修也、許さない……!」
目金さんの言葉をスルーしながら豪炎寺さんに「僕の席を返せ」オーラを出すも、やはり知らん顔。……いやあの人、気付いてる。だって肩震えてるもん!!
「お前が来てないときもそこに人は座ってんだから、今更だろ」
「鬼瓦のおっさんにもそんなこと言えるの…!?」
「ま、そもそもそんなにカウンター席に人は座るのは鬼瓦の親父かお前さんくらいだがな」
「ほら、苗字はいつものだろう?」と言って、雷雷軒のおっさんはチャーシューメンを出した。
「分かってるじゃーんっ、おーっさん!」
「こら苗字、おっさんじゃなくて『響木監督』だろ」
「僕サッカー部じゃないもーん」
半田さんは僕のお母さんか何かなの?
雷門夏未と風丸さんの間に失礼して、ラーメンを取る。
「……」
その時に目に入ったトロフィーに視線を移す。
僕の家にもトロフィーがいくつかある。
小さな大会で貰ったものや、小学生部門の大きな大会で貰ったもの、更には僕の名前が彫られたものもある。
「? どうした、苗字?」
「……いや、本当に君達が地区予選を勝ち抜いたんだなーって思っただけ」
不思議な顔で僕を見ていた風丸さんにそう返して自分の席に戻る。
……流石にずっと置きっぱなしも良くないよね。家に帰ったら磨くか。
そう思いながらラーメンを啜って……
「熱いぃぃ……」
「本当学ばないな、お前さん」
僕が舌を火傷して唸るとドッと起こった笑い声。
何で先に言ってくれないんだよ、おっさん!!
雷雷軒のおっさんの言葉に、僕は涙目で睨むことしか出来なかった。
2021/02/20
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