対 帝国学園



鬼道さんは足を引きずりながらフィールドの外へ出て、足の状態を確認している。
そんな鬼道さんに近づく一人の女子生徒。…って、


「春奈……!」


救急箱を持って、鬼道さんの元へと近づていたのは春奈だった。
……二人の関係は、今度聞こうっと。

春奈が鬼道さんの足の手当をしている所をジッと見つめる。
流石にコンタクトレンズで視覚を良くしていても、此処からでははっきりした情報は得られない。

鬼道さんは春奈が手当てを終えた後、足に靴下を通し靴を履いた。
靴紐を結んでいる鬼道さんを、春奈はジッと見つめている。
立ち上がった鬼道さんは春奈に背を向けた。

……先程会話を交わした鬼道さんは、最初の印象が嘘の様に優しかった。
それに、春奈に対してのあの態度は何処か悲しげだった。


「……大丈夫。あの人はきっと、何か理由があって会えなかっただけなんだよ」


鬼道さんの背中を見つめている春奈を見ながら、僕はそう言葉を零していた。



試合再開

染岡さんの必殺技“ドラゴンクラッシュ”が帝国側のゴールに向かう。
染岡さんのシュートを帝国のGKさんは先程見せた必殺技で跳ね返す。
次に豪炎寺さんの必殺技“ファイアトルネード”が帝国側のゴールへ向かう。


「!…へぇ、連続で出せるのか、あの必殺技」


……豪炎寺さんの必殺技でも、帝国のGKさんの破ることが出来なかったようだ。
連続で出せるとなると、隙がないな。

ボールは前線にいる鬼道さんへと渡った。
彼の前には佐久間さんと9番さんが走っている。
……これは、何か仕掛ける気だな。


「……!!なんだ、あの技は……!」


鬼道さんの指笛で現れた五羽のペンギン。
そのペンギン達を纏ったボールを、前にいる佐久間さんと9番さんがツインシュート。
その威力は、今まで帝国が使ってきた必殺技で一番強力だと思う。


「でも、あの技なら……!」


円堂さんが使う、“ゴッドハンド”なら止められる……!
だって、今まで破られたことがないのだから……!
円堂さんが必殺技“ゴッドハンド”を使った。


「……!」


押し合いの結果、帝国の必殺シュートが“ゴッドハンド”を打ち破った。
鳴り響くホイッスル。……“ゴッドハンド”が破られてしまったのだ。


「……しっかりしてよ、円堂さん」


0-1
帝国に先取点が入った所で、前半戦が終了した。
ベンチに戻っていく円堂さんを、僕はジッと見つめる。
……僕の目に映る円堂さんには、あの日帝国学園との練習試合で見た輝きを感じなかった。





2021/02/20


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