対 帝国学園



「さて、あの試合から雷門はすごく成長した。どんな試合になるか……楽しみだよ」


席に戻り、腕を組んでフィールドを見る。
再び選手が入場し、会場は観客の声で一杯だ。

試合開始のホイッスルが鳴り響き、雷門のキックオフで試合開始。
豪炎寺さんにボールが渡り、帝国側へと攻め上がっていく。
そんな豪炎寺さんの前に、スライディングでボールを奪おうとする相手選手二人が迫っている。


「…おぉ」


豪炎寺さんがジャンプして躱した、と思えばそこにはボールがない。
どうやら躱す前に染岡さんにバックパスを出していたようだ。
そしてあの赤いドラゴンが出てくる必殺技…“ドラゴントルネード”を帝国ゴールへと放った。
あの練習試合でははっきりと分からなかったけど、帝国のGKさんの実力はどれほどのものなのかな?


「! 止めたか」


帝国のGKさんは必殺技を展開し、ボールを防いだ。
練習試合では見せなかったが、帝国のGKさんの必殺技は合体技である“ドラゴントルネード”を弾き、ゴールを防いだのだ。
必殺技の合体技って結構威力あるのにあの必殺技……なかなか固いみたいだ。見た目は薄そうなのに。


「でも、僕にとってGKと言えば……」


視線を帝国のGKさんから雷門の方を……円堂さんの方へ向ける。
あの必殺技……“ゴッドハンド”を帝国との練習試合で見てから、僕は貴方に引かれ始めたんだろうね。

ボールは鬼道さんへと渡った。
鬼道さんはボールを9番へとパスを出す。
そして、練習試合でも見せたあの必殺技を雷門側ゴールへと放った。


「大丈夫。今の貴方なら止められる」


円堂さんが“熱血パンチ”でボールに立ち向かった。
この目でずっと見てきた。
貴方はあの日からかなり成長している。今の貴方なら止められるよ。
そう思っていたのに……。


「は?」


結果を先に言うと、ゴールは守った。
評細を言うと、ボールはゴールのクロスバーに当たり、運良くゴールに入らなかった。


「……嘘でしょ?」


ボールはフィールドの外に出た。
だからゴールを守れたのにかわりはないんだけど、どうしても気になる。

円堂さんは開いて閉じてを繰り返してる自身の手を見ていた。
必殺技というものは、自分の気持ちによって加減や威力、成功率等々…と、割と反映されやすい。
それは必殺技だけというわけではなく、スポーツや勉強等様々な事にも言える事だ。
つまり何が言いたいのかと言うと……今、円堂さんはサッカー以外の何かを考えていて、必殺技の質が落ちたとする。


「……フィールドで別の事を考えていたら“終わる”よ」


そう言った僕の声は、自分でも驚くほどに低い声だった。



***



帝国のコーナーキックで試合再開
鬼道さんが蹴ったボールは、円堂さんの正面にいる佐久間さんに向かって行く。
そのボールを佐久間さんはヘディングでシュート。


「正面。取れて当たり前だよ」


……しかし、円堂さんはボールを弾いた。


「………」


慌てて押さえ込んだ円堂さんを見て、何かが冷めていく気がした。
……ああ、これは円堂さんに対する感情が冷めているんだ。

僕を引きつけた貴方は何処へ行ったの?
今の貴方は、見ていて面白くない


ボールは少林寺へ渡る。
が、その瞬間。鬼道さんがボールを奪った。

鬼道さんは立ち塞がった壁山を軽々と抜き、ゴール前へ。
足を後ろへ大きく引き、ボールを蹴った……その時、


「!豪炎寺さん……っ!」


なんと、豪炎寺さんがゴールまで下がってきていた。
鬼道さんと豪炎寺さんの足がボールを互いに押し合う。……その押し合いに勝利したのは豪炎寺さんだ。


「……あれは、痛めたな」


先程の押し合いで負傷したのか、鬼道さんが足を押さえた。
ボールを持っていた8番さんが自らボールを外へ出した。……良いチームメイトじゃない、鬼道さん?





2021/02/20


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