雷門中サッカー部との出会い



試合当日

帝国学園との練習試合って事もあるのか、沢山の生徒が見学している。
かくいう僕もその試合を見学している1人だ。
殆どの生徒が制服姿である中、僕だけがジャージ姿である。
ま、誰もこちらを見る人なんていないだろうけど。人気の無い場所にいるつもりだし。そもそも僕、そんなに注目浴びるような人じゃないと思う。そこらにいるふっつーの生徒だもん。


「……ん」


何かの音、飛行物体が飛んでいるような音が聞こえた。その方向へ視線を向けると、そこには大きな船が校門前に着陸しているところだった。
旗には『帝国学園』の文字が書かれている。


「随分と派手な登場だな」


校舎の壁に寄りかかって腕を組みながらその様子を伺う。しばらくして出てきたのは、帝国学園の制服を身に纏った男子生徒だ。

レッドカーペットが引かれたと思えば、その端に先程出てきた沢山の男子生徒達がボールを片足に並んだ。

なんだなんだ?
レッドカーペットなんてテレビでしか見たことないよ。一体誰が出てくんのさ。……ま、今日帝国学園が何しにうちの学校に来たのか分かってるから、誰が出てきてそのレッドカーペットを歩くのかは予想は着くけど。


「……あれが、帝国学園サッカー部のメンバーか」


出てきたのは、帝国学園のユニフォームを纏った男子数人。そして一番先頭に立っている人が、恐らくあのチームのキャプテンだろう。何となくだけど、風格がそんな感じがした。

というより、何あの王者の余裕感。別に変とは思わないけど、わざわざ練習試合のためだけにこんな派手な事する必要あるかなぁ。


グラウンドに入ってきた帝国学園の人に、1人のある人物が駆け寄った。その人に僕は見覚えがあった。先日僕をサッカー部に誘った男の人だ。名前は知らないけど、キャプテンマークをつけてるから、雷門中サッカー部のキャプテンだろう。

挨拶しに行ったのだろうと思って見ていると、帝国学園のキャプテンだと思う人は辺りを見渡しだした。
___そして、その人物と視線が合った。


「……?」


不思議に思いながら僕も見つめ返していると、その人物がこちらを見てニヤリと笑った。
……なんだよ。人を見て笑うなんて、失礼な奴。

雷門中サッカー部はグラウンドから出て、帝国学園サッカー部のウォーミングアップを見ている。
「消えた!?」やら「なんだよあの動き……!?」とか聞こえるけど、僕はそう思わない。

消えるように見えないし、あの動きは努力をすれば誰だって出来る。これだけで雷門サッカー部のレベルが少し分かってきた気がする。


「……んー、大したことないかな」


40年間無敗だって聞いてたから楽しみにしてたけど、あまり興味はそそられない。まあまだウォーミングアップ中だし、試合となればまた違った所を見れるでしょ。

というわけで、試合が始まるまで音楽聴いて時間を潰そう。そう思って、ポケットから携帯とイヤホンを取り出した。
携帯のイヤホンジャックに端子を差し込んで準備完了。イヤホンを耳に付けようとした瞬間だった。


「!?」


突如、大きな音が聞こえた。
何事かと思いながらその方向へ視線を向けると、キャプテンさんがボールを両手で受け止めている所だった。
何とか止めたようだけど、ボールとの摩擦で受けた痛みに耐えているのか、少し震えているように見える。


「……シュートを止めるのがやっとか。ちょっと残念」


帝国学園のキャプテンの人に向かって何かを言っている我が校のサッカー部のキャプテンを見て、僕はぽつりと感想をこぼした。まぁ、さっきの他の部員の声でなんとなくレベルは想像できたけどさ。

とりあえず今日この試合を見ようと思ったのは、帝国学園がどれほどの強さを持った学校なのか気になったからだ。所属校だけど、一旦雷門の事は忘れようかな。





2020/12/26

加筆修正 2022/05/03


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