対 帝国学園



昨日、サッカー部の練習に少し混ざり、アドバイスをした。
まだまだ改善点は多いけど、こういうのって育て甲斐があるから楽しいんだよねー。
……将来、サッカーの監督かコーチやろうかな?絶対向いてると思う!

と昨日の事を思い出しながら、過ごした今日。既に放課後である。
家に一度帰り、サッカー部は練習してるのかなーと思いながら河川敷のグラウンドを見る。


「……あれは」


グラウンドの中にいるのは、二人だけだ。
僕は目が悪いので、コンタクトレンズを付けていないと、ほとんど見えない。
今日はまだ外していないので、しっかり視界が綺麗に見えている。


「円堂さんと、雷雷軒のおっさん?」


雷雷軒のおっさんはボールを蹴っており、円堂さんはグローブを付けている。
……何かやるのかな。
小走りで向かい、河川敷のグラウンドにあるベンチに向かう。
どうやら二人は僕に気付いていないらしい。……あれ、僕って影薄かったっけ。


「……雷雷軒のおっさん、良い蹴りしてる」


雷雷軒のおっさんから放たれた強いシュートを、円堂さんは何とか弾く。


「1本目!止めたぞ!」

「やるな」


雷雷軒のおっさんは持っていたボールを上に放り投げ、落下してきたボールをタイミングよく蹴った。
その威力は先程よりも強い。

……円堂さん、どう出る?


「……あれは、“熱血パンチ”だ」


円堂さんは必殺技“熱血パンチ”でボールを何とか弾いた。
弾かれたボールを雷雷軒のおっさんは片手でキャッチ。
弾き返してあの威力とスピード……。何あれ、僕も打ち返したい!


「どうだ!2本目だ!」

「調子に乗るなよ。次の1本落としたら、監督の話は“無し”だ」

「おうッ!!」


雷雷軒のおっさんの言葉に、二人が何をしているのか理解した。
円堂さんは雷雷軒のおっさんを監督にしたい訳だ。
勝負して勝ったら監督になってくれ、って奴でしょ?よく見るパターンだよね。

雷雷軒のおっさんは持っていたボールを置き、今までの中で一番強いシュートを放った。
その風圧は僕の方までやって来た。


「……あっ」


巨大な手の必殺技……!
その必殺技の名前は


「“ゴッドハンド”……。あの必殺技の名前は、“ゴッドハンド”って言うんだ……!」


“ゴッドハンド”。
あの日、帝国学園との練習試合で見せた、あの人の必殺技。

雷雷軒のおっさんが笑い声を上げながら円堂さんに近づいていく。
「大介さんが帰ってきた!」と言っていた。……大介さんって誰。円堂さんのおじいさんの事かな。円堂さんの事を『孫』って言ったからそうだろうな。
と、二人の会話をジーッと二人を見ていると……


「あっ、苗字!!」


僕に気付いた円堂さんが手を振ってこちらを見ている。
ベンチから立ち上がって、二人の元へ歩いて行く。


「お前さんは、よく店に来ている……」

「そう。常連客の苗字名前だよ、雷雷軒のおっさん」


そう言ってニッコリと笑うと、


「響木。『響木 正剛』だ。……常連客なら覚えておけ、“光のストライカー”」

「! 僕の事、知ってたんだ」


響木、と名乗った雷雷軒のおっさんの言葉にちょっぴり驚く。


「サッカー界に帰ってきたと聞いたが」

「あ〜、それはない。あの試合だけだよ」


雷雷軒のおっさんの言葉は、恐らく先日会った秋葉名戸学園との試合の事を言っているんだろう。


「でも……」

「ん?」


円堂さんの方を見ると、不思議そうに僕を見つめている大きな瞳と視線があう。


「円堂守。……彼ら次第でどうするかは決めるさ」


「頑張ってよね?」と言って二人から背を向ける。
あ、そういえば。
途中で足を止めて、円堂さんの方を振り返る。


「次、帝国と試合でしょ?見に行くから」


「じゃあね〜」と言って、階段を上がっていった。後ろから聞こえる円堂さんの声に手を挙げて返事の意思を示した。





2021/02/20


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