対 秋葉名戸学園



両チーム無失点で前半が終了し、現在ハーフタイム。


「まさかサボっている……なんて言わないよな?」

「サボってるわけないじゃーん。何言ってるのかなぁ、豪炎寺さんは!」


豪炎寺さんから視線を逸らしながらそう答えた。
……誤魔化せた、かな?


「期待しているからな」

「ま、あんなチームに負けたら僕の名が恥じちゃうしね」


ドリンクを飲みベンチに置いた後、フィールドに向かって足を進め、頭を働かせる。

尾刈斗中に勝ったくらいだから、多少はやれるかなと思っていたんだけどそうでもないようだ。

ザ・文系でオタク集団。
オタクと言われてイメージが湧くのは、ハチマキ巻いて、自分が推している人、またキャラクターが印刷されたシャツを身につけ、光る棒を持っている、というのが僕の中でオタクというイメージだ。


「さて、そんなオタクサッカー部はどんなプレーをするのかな?」


自分のポジションに着いて、目の前に見えている秋葉名戸学園サッカー部を見つめた。



***



後半戦開始

僕の予想通り、後半戦が始まってから動きが変わった。
これは、僕がいくつか予想していたものが当たったみたいだ。


「変身!“フェイクボール”!」


恐らく必殺技であろう台詞を言いながら、相手の4番さんは松野さんの横を通過する。


「何が変身だよ……えっ、あれぇ!?」


4番さんとすれ違った瞬間、松野さんが蹴っていたボールはスイカになってしまった。
…あれ、秋葉名戸学園の監督さんがずっと食べてるやつの1つでしょ。

相手の4番さんは「ヒーローキック!」と言いながらパスを出す。
ボールは相手のFWへと渡り、遂にゴール前へ。


「“ド根性バット”!」


恐らく必殺シュートであろうシュートをした相手。
…あれ、漫画萌って人痛くないのかな。
と、のん気な事を思っていると、円堂さんは彼らの動きの変化に対応できずにゴールを許してしまった。

0-1
秋葉名戸学園、先取点獲得だ。


「苗字、お前助っ人なんだろ!?仕事しろ、仕事!」

「一点くらいは必要経費さ。……これからちゃあんと仕事するって」


怒鳴ってきた染岡さんにそう返し、ポジションへと戻っていった。
さて、この後の動きとして考えられるのは……。

試合再開のホイッスルが鳴り響く。
目の前にいるのは、全員でゴールを守っている秋葉名戸学園。


「まるで、初心者らしい動きだな」


そう思いながら、ゴールに向かってドリブルしている染岡さんを見つめる。
簡単に抜き去る事ができるみたいだし。
これはすぐに一点を取り返せるな。

自陣に突っ立って、相手を分析しているうちに、染岡さんは秋葉名戸ゴール前に。
たいしたことなかったな。
目を閉じ、決まるであろうシュートを待っていた。


「“五里霧中”!」


悪あがきか。
後でもう一点取らなければならないので、相手の必殺技を分析するためジッと見つめる。


「“ドラゴンクラッシュ”!」


染岡さんの必殺シュートが放たれる。
あの必殺技、“ドラゴンクラッシュ”って言うんだ。
やっと知る事ができた染岡さんの必殺技を頭の中で復唱していると、砂埃が晴れた。
さてさて、点は入ったのかな……って。


「…は?」


なんとボールはゴールに入ってなかった。
可笑しい。
染岡さんはゴールに対して真っ正面にいたはず。
あの砂埃がコースを変える程の力があるとは思えない。


「…これは、あと一人誰かが打ってくれたら分かるかもしれない」


先程の必殺技、五里霧中の秘密を。
ゴールの側で仰向けで倒れている秋葉名戸GKをジッと見つめた。





2021/02/20


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