対 秋葉名戸学園



「さあ!フットボールフロンティア地区予選決勝!雷門中対、秋葉名戸学園の一戦がいよいよ始まります!!………おっと!!? あの姿はもしや!?」


耳に入ってきた、いつもは観客席から聞いていた声。
何その如何にも驚きました見たいな声。
その方へと耳を傾ける。


「1年前に姿を消した、電光石火の如くサッカー界へと現れた選手“光のストライカー”苗字名前ではありませんか!!」


わああああフルネームで呼ばないでお願いだからあああっ!?
実況してる人に向かって心の中で叫びながら、恐る恐る視線を友の方へ向ける。
……まだメイド服に夢中だった。あれは聞こえてないな、うん。
だからなんで僕はこんなにも春奈に対して警戒しているんだ……。



***



「皆ー、集まってくれー!」


ベンチに座っている円堂さんの声で、メンバーが集まる。


「…大丈夫か?」

「あ、彼奴ら……っ、試合でこてんぱんにしてやる……!」


再び秋葉名戸学園サッカー部のメンバーに捕まり僕は逃げ回っていた。
隣にいた風丸さんから声をかけられ、無視する訳にもいかないのでゼェゼェと息が乱れた状態で返した。

円堂さんからスターティングメンバーを発表された。
黙って聞いていると鋭い視線を感じた。
気になったのでその視線の元へと視線を移すと、そこには不満そうな表情の豪炎寺修也が視界に入った。


「……何故FWじゃないんだ」

「なんで残念そうなの」

「お前のシュートが見たいんだ。……お前に影響された所があるからな」


あの豪炎寺修也が、僕に影響されて……?


「僕に、影響された? そんなまさか」

「本人に自覚がないとはな。お前の活躍に影響されてサッカーを始めた人は多いと聞く」

「それは貴方にも言える事なんじゃない?豪炎寺修也」


自分にも言える事なんじゃない?と豪炎寺修也に言うと、目の前の人物はフッと笑った。
貴方のプレーも、結構人を引きつけると思うけどなぁ。


「さっきから思ってたんだが……何故、フルネームなんだ?」

「……何となく?」

「豪炎寺でいい」

「じゃあ豪炎寺さんって呼ぶね」


豪炎寺修也…じゃなかった。豪炎寺さんにそう言って笑顔を向ける。
本日から豪炎寺修也呼びから、豪炎寺さん呼びへと変わった。


「……なぁ、苗字。お前は男だよな……」

「カオリちゃああああんっ!!!」

「ぎゃああああああっっ!!?」


豪炎寺さんが何か言いかけていたような気がしたが、僕には此奴ら(秋葉名戸学園サッカー部)から逃げなければならないのだ。
話なら後で聞いてあげるから、今は逃げさせて!!


「………」

「豪炎寺? 何か……落ち込んでないか?」

「……気にするな」


風丸さんの言葉に豪炎寺さんがそう答えていたのを、逃げ回っていた僕は知らない。


***



試合開始

久しぶりのフィールドにちょっと感激した事、先程相手チームからの仕打ちにやり返そうという気持ちがある事でやる気は十分だ。
…だった、のだが。


「……なんだ、これは」


ボールは秋葉名戸学園からだったので、奪いに行かなければならないのだが…。
ぜんっぜん攻めてこない。
それに、何か意味わかんないこと言ってるし…。


「カオリちゃん!!俺は君が敵だとは思いたくなかったよ…!」

「はぁ?」


正面に来たと思えば突然僕を指指して涙目でそう言った相手選手。
……オタクという人達は良く分からない。

相手の言動に呆れている間にボールは別の選手の元へとパスされた。
どうやら他のメンバーも、秋葉名戸学園の行動に困惑しているようだ。


「ま、相手が攻める気が無いなら無駄な体力使いたくないし、動かなくていいや」


それに、向こうの魂胆なら既に見えている。
相手がもし、うちのサッカー部にいるある人と同じ人種であるならば……。


「“本調子”は後半からだ」


適当に時間を潰している間に前半戦が終了した。





2021/02/20


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