対 秋葉名戸学園



「さあ、入ってくれ」


エレベーターを出て目の前に広がった光景は、まるで倉庫のような場所だった。
目金さんは1人飛び出していって、辺りをキョロキョロと見渡している。


「目金さん、楽しそー」


なんか良く分からない事を大声で言いながら走り回っている目金さんは楽しそうだが、此処に取り残されている僕達にとっては謎の時間である。


「お前、すっげー詳しいんだな…!」

「僕に知らない事はありませんよ!」

「やはり君なら、此処にある物の価値を分かってくれると思ったよ」

「僕達と同じ『オタク魂』を感じたんでね」


…オタク、魂。


「中々いい品揃えだと言えるでしょう…」


目金さんの眼鏡がキラリと光った。


「すげー…」

「ついて行けない…」


半田さんと心情が被った。
完全に取り残されている僕達。
目金さんはまた何かを見つけたのか、その場所へと走って行った。


「まさか…!『マジカルプリンセス シルキー・ナナ』全巻セット!!」

「何ですか?それ」

「原作を『野部流 来人』先生、絵を『漫画 萌』先生が手がけられた、至上最高の“萌え”漫画です!!」


もえ、とは。
『少林寺 歩』が作品について目金さんに尋ねると、丁寧に作者と絵担当の人の名前を教えてくれた。


「嬉しいねぇ。我々の作品をそこまで褒めて貰えると」

「我々…?」

「そう。私が原作した『野部流 来人』」

「僕が、『漫画 萌』さ」


なんと、僕達を此処まで案内してきたのは、先程目金さんが説明していた中にあった名前の人、本人だったのだ。
…あれ、中学生なのに漫画とかそういうの出版できるの?
細かいことは気にしなくていっか。


「まさか、伝説のお二人にお会い出来るなんて…!」

「我々も君のようなファンに出会えて嬉しいよ」

「今日はじっくり語り合おう」


そう言って握手をしようとする目金さん達の間に


「ちょーっと、ストップストップー」


円堂さんが割り込んだ。
別に握手くらいさせてあげれば良いのに。


「悪いけど、そんな事している暇はない。俺達はもうすぐ、大事なサッカーの試合があるんだ」

「おや、君達もサッカーやるのかい?」


円堂さんの言葉に、野部流来人って人がそう言った。


「え、君達も、って?」

「僕達も今、結構大きな大会に出ていてね。えっとー…なんだっけ?」

「フットボール、なんとか」

「えっ…、まさか。フットボールフロンティアか?」

「そうだっけ?覚えてないな……っおい!俺のアイテムとるなよ!!」


…あの人がやってるゲームなんだろ。
ちょっとだけさせて貰えないかなぁ。


「メイド喫茶に入り浸っている、オタク集団…」

「秋葉名戸学園サッカー部、って…まさか」


風丸さんと円堂さんの言葉に、僕はもう確信を持っていた。
視線は野部流来人って人と漫画萌って人に移る。


「僕達の事ですが…。何か?」


野部流来人がそう言った瞬間、サッカー部が絶叫した。


「…何となくそう思ってたんだよねぇ」


そもそもメイド喫茶にこんな所があること自体可笑しいし。
集団で入り浸るような場所でもないし?
と、ずっと思っていた事を心の中で言っていた時。


「君、可愛いねー?」

「は?」

「男装魔法少女に出てくるカオリちゃんに、すっごく似てる!!」

「え?」


何処から現れた分からない男の人2人が僕に話しかけてきた。
え?ナンパ??
いやそれにしては名前違うし、そもそも自己紹介してないし!
急な事だったので頭が追いつかない。


「てか、僕の名前カオリじゃないし…」

「僕っ子!!ますますカオリちゃんっぽい!!」

「あの、ちょっと話を聞いて……」

「ちょっと付き合ってほしいんだなーっ!!」

「え、は?! ちょっとーっ!!?」


名前も知らない秋葉名戸学園サッカー部の人に引っ張られて、サッカー部の皆から離れてしまう。
後ろから「苗字ー!!?」と僕を呼ぶ円堂さんの声が聞こえた。





2021/02/19


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