対 野生中



「フットボールフロンティア、FFっと……」


帰り道

いつも通り制服を着崩し、携帯片手に下校する。
携帯の画面に映っているのは、フットボールフロンティアについて。
お、雷門は野生中って所と戦うのか。


「へぇ、高さだけなら帝国にも勝つんだ」


野生中については知らない…というより、そもそも中学サッカー自体あまり分かってない。
だって僕、まだ中学生なったばっかりだもーん。…もう夏だけど。


「おぉ〜、今日も練習頑張っておりますなぁ〜」


いつも通り河川敷にある橋を通っていると、雷門中サッカー部を発見。
ちょっと見ていこう、と思って手すりに手を乗せて練習風景を眺める。


「新必殺技!!ジャンピングサンダー!!」

「…あの人達、何やってんの?」


1人は分かる。同じクラスの『栗松 鉄平』だ。
もう1人…7番の人は知らない。
栗松は顔から落下して、7番の人は………。とりあえず、2人とも痛そう。


「シャドウヘアー!!」


次に目に入ったのは8番の人。
…あれ、髪に隠してるだけじゃん。てか、落ちてるしボール多い。
試合はボール一個しか使えないの分かってるよね?


「壁山スピン!!」


次に目に入ったのは3番の人。
…回ってるだけじゃん。ボールに当たってないし。
てか、帝国学園との練習試合で逃げてたあの人、壁山っていうんだ。


「……フットボールフロンティアに出るんじゃなかったっけ?雷門中サッカー部はなにしてんの?」


この光景に首を傾げていると、1人の人物が視界に入る。


「…本当にサッカー部にご執心なんだ、春奈」


同じクラスだし普段一緒にいるから見慣れてはいるけど、学校指定じゃないジャージ姿を見るのは初めてだ。
今日は見ていても面白くなさそうだし、さっさと帰ろ。


***



「え〜!?」


机の上に置いてある一枚の紙を見て叫ぶ。
帰ってきて早々叫んでいる理由……それは。


「『お食事会に誘われたので、出かけてます。ご飯は自分で作れるでしょ?材料はあるので、晩ご飯は自分で作って食べておいてください。夜には帰ってきます』……」


ばあちゃんが不在だと言うこと。
確かにばあちゃんの手伝いをしていたから、料理は作れる。
だけど、今はそんな気分じゃないんだよ〜…。

僕は、じいちゃんとばあちゃんの3人で暮らしている。
まさか、今日からじいちゃんが出張で暫く帰らないから、それを狙って……!
ばあちゃんの思考を推理しているとぐぐぐ〜、と腹の虫がなる。


「……そうだ!ラーメン食べに行こう!」


思いついた結果、ラーメンを食べに行くことにした。
東京に引っ越してきて、周辺に何があるのか知る為にぶらぶらと彷徨いていた時に偶々見かけ、食べに行ったラーメン屋がある。
割と気に入っており、偶に食べに行くのだ。
それに、東京に引っ越してきてからばあちゃんがよく食事会に行くようになった。まあ、ご近所さん付き合いは大事だもんね、うん。

ラーメン屋で早い晩ご飯をすませようと思い、制服を脱いでパーカーに着替える。
スカートを脱いでズボンを履き、机の上に置いていたヘッドフォンを首に掛ける。
そして財布をパーカーのポケットに突っ込んで、家の鍵を持って玄関へ足を進める。


「よし。いってきまーす」


誰もいない家にそう声を掛け、鍵を閉めた。





2021/01/17


prev next

戻る














×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -