対 野生中
スライド式の扉を開け、建物中に入る。
「いらっしゃい。…ああ、お前さんか」
「やっほー、雷雷軒のおっさん」
ラーメン屋『雷雷軒』
実はこのラーメン屋さんの常連客だったりする。
なのでこの店の店主であるこの人も、僕を覚えてくれている。
僕はいつもの場所…カウンター席のコーナーになっている所の近くの席に座る。
近くには、いつも見かけるおっさんが新聞持って座っている。因みに、話しかけたことは一度も無い。目があったことあるけど。
「おっさん、いつものちょーだい!」
「はいよ」
料理が出来るまで携帯に入っているアプリゲームをして待っている事に。
…う〜ん、良い匂い。またお腹が鳴りそう。
そう思いながらポチポチとゲームをしていると、皿がちらっと視界に入った。
「出来たぞ」
「わー!いただきまーす!」
携帯をポケットにしまい、ヘッドフォンを外して汚れない位置に置く。
できたラーメンを受け取り、割り箸を持って手を合わせる。
「お前さん偉いな。最近の子は『いただきます』って言わない子が多いらしいぞ」
「そうなの?いつも言ってるよ」
いつも新聞を読んでるおっさんが、僕に話しかけてきた。
「のびちまうから早く食べな」と言われたので、僕はそれに返事をして割り箸を割って、麺を啜った。
「あちっ!?……舌火傷した〜っ」
「いつもの事だろ」
「ぶーっ」
僕の悲鳴に雷雷軒のおっさんは水を出してくれた。
……実は猫舌で、熱い食べ物を食べるのが凄く遅いのだ。
ごくごくと水を飲んでいると、店の扉が開いた。
その音に反応してその方向を見た瞬間、喉を詰まらせてしまった。
「んぐッ?!げほっ、げほっ」
なんとそこには雷門中サッカー部のキャプテンさんが。
僕と目が合うと、「あー、君!!」と言って僕を指さし大声を上げた。
そして、キャプテンさんの後ろから入ってきたのが…
「…!」
豪炎寺修也と、髪を高い位置で結んでいる2番の人。
豪炎寺修也は僕と目が合うと目を見開き驚いた様子でこちらを見ていた。…なんでだろ?
一つ席を空けて豪炎寺修也が隣に座った。
豪炎寺修也の隣にキャプテンさん、2番の人と座る。
「………」
「………」
視線が凄い!!
あと、ラーメン食べづらい!!
「な、なに?」
僕が口の中にあった麺を呑み込んでから、そう尋ねる。
だって見られてる理由がわかんないんだもん。
「君、苗字って言うんだろ?」
「そうだけど……、なに?」
名前、知ってるんだ。
“光のストライカー”としての僕は知らないだろうし、同じクラスの人から聞いたのかな。
僕と同じクラスであるサッカー部は……春奈と栗松だな。
「なあ、帝国との練習試合見てくれたか?」
「うん、見てたよ。すっごくボロボロにされてたね」
キャプテンさんの質問にそう答えて、麺を啜る。…あちっ。
話してたら麺がのびちゃうよ。
2021/01/17
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