対 イプシロン



「諸君、キックオフといこうか!」


イプシロンとの試合が開始された。体調が万全であればどんな相手なのか直に実感できたわけだけど……でも、外から見ることも大事だ。

今回は外から見てイプシロンがどのようなチームなのか理解しよう。


「やっぱり苗字さんが出た方が良かったのでは……」

「体調崩した人に出させるんだ、目金さんひっど〜い」

「そ、そういう訳では!!」


目金さんの発言に冗談を込めた発言をしながらも、頭の隅には木暮がいた。雷門の様子を見ていると、木暮の実力が測れないようで疑っている様子。円堂さんが了承したからしぶしぶ受け入れてるって感じ。

実際の所、僕は木暮を信用しているようで不安に思っている部分がある。実力は申し分ない、けどそれを実際のフィールドで出来るかどうかだ。できなければ宝の持ち腐れってやつになってしまう。


でも、初めから堂々と自分のプレイをできるかどうかは人によると思う。まあ慣れだよね。木暮はずっと補欠だったということは、試合には一度も出ていないと言うこと。

つまり、今目の前で始まろうとしている試合が彼の初試合というわけだ。……同じサッカープレイヤーというポジションで言えば、初試合がこれはかなり厳しいと思う。

いくら信用していないとは言え、自分が所属するチームがあっさりと負けたのだ。ビビって当然だと思う。


「聞け、雷門中! 破壊されるべきは漫遊寺中に非ず! 我らエイリア学園に刃向かい続けるお前達に……雷門イレブンと決まった!」

「勝手に決めちゃってるよ」

「漫遊寺中は6分で片付けた。だが、お前達はジェニミストームを倒した。その実力を讃え、『3分』で決着とする。光栄に思うが良い」


さ、3分!?
そんなの試合が始まってすぐじゃないか!!

フィールドの方からもチームメイトの不満の声が聞こえてくる。吹雪さんは楽しそうなコメントをしてるけど……。そして、吹雪さんのコメントに染岡さんも乗り気だ。なんだかんだ相性いいのかもしれないな、あの二人。



「エイリア学園ファーストランクチーム、イプシロンの力___思い知るがいい!」


3分という時間でどう雷門を倒すというのか……その自信、目を逸らさずに見てやるさ。例え僕が知っている”みんな”に似ていようと。


「3分だなんて……!」

「それだけ私達に対して本気なのよ」

「ええ。でも漫遊寺戦の6分間で、イプシロンがどんな戦い方をするか掴めたわ」


瞳子姉さんの言葉に僕もマネージャー陣と共に驚く。まあ僕は途中から見たから完全に把握できたわけではない。ここは瞳子姉さんの話を黙って聞こう。


「ジェミニストームはスピードで押してくるチーム。それに比べて、漫遊寺中との試合で見せたイプシロンの戦いは、的確にFWを封じて相手の攻撃を削いでくる。漫遊寺が破れたのは、満足にプレイをさせてもらえなかったから」


なるほど……確かにジェミニストームはスピードって感じだった。途中からだけど、イプシロンはFWを封じた動きをして、攻撃のチャンスを奪っていたように見えた。瞳子姉さん、よくあの短時間で見抜いたなぁ……流石だ。


「はい! お待たせ致しましたっ!!」

「「「わあああっ!!?」」」

「角馬くん!?」


突然の大きな声に僕含め周りから驚いた声が出た。大きな声の元へ反射敵に振り返ると、そこにはお馴染みになってきた実況の人、角馬さんだ。


「漫遊寺戦の時には来なかったのに」

「小生、雷門中の一員として雷門の試合を余さずお伝えすることを心情としております! 悪しからず、漫遊寺中の皆さん!」

「は、はぁ……どうぞお気遣いなく……」


だから雷門中の試合の時には絶対いるのか……。そう思いながらも反射敵に抱きついてしまった瞳子姉さんから離れる。


呼んでない……という本音を心の中で思いながら、角馬さんによる実況が始まる。漸く試合が始まるね。

ポジションは簡単に説明すると……FWは染岡さんと吹雪さんの2トップ。MFに風丸さん、鬼道さん、一之瀬さん。DFは栗松、壁山、塔子さん、木暮、土門さんだ。GKは勿論円堂さんだ。


「さて、イプシロンは漫遊寺中と同じ戦い方をするのかどうか……」


視線をフィールドに向け、そう呟いていた瞬間、試合開始のホイッスルが鳴り響いた。……みんな、気を付けて。





2023/7/2


prev next

戻る














×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -