対 ジェミニストーム



瞳子姉さんを探しに外に出たけど、見当たらない。
今すぐ聞きたいんだ……レーゼの事を。


「……! いたっ」


息を切らしながら走り回ること数分。
白恋中の近くに止めてあるキャラバンの側に瞳子姉さんの姿を捉えた。


「瞳子姉さん!!」

「……名前。起きたのね、調子はどう?」

「そんなこと、今はどうでもいいよ」


瞳子姉さんの元に駆け寄り、息を整える。


「……教えて。レーゼは___リュウちゃんなの」


瞳子姉さんの表情は変わらない。
……それに、根拠はないけど僕がその質問をするのを分かっていたと言っているように見えた。


「何を言っているの、名前。彼らはエイリア学園。貴女の知るみんなと関わりがあるわけないでしょう?」

「でも、あの時……!」

「あの時……が、何?」

「僕は誰かに突き飛ばされた! きっとそれは……レーゼだ」

「……へぇ。敵対しているというのに、何故助けたんでしょうね」

「それは、レーゼが……」

「名前。突き飛ばされたと言っていたけど、それは気のせいよ。ジェミニストームが消える瞬間を見ていたけど、誰も貴女を突き飛ばしたように見えなかった。貴女は運が良かったの」

「……瞳子姉さん」

「分かっているでしょう。貴女の知るリュウちゃんとは明らかに違う事を」

「……っ」

「さあ行くわよ。支度の準備をしなさい」

「……分かった」


僕にそう言って背を向けた瞳子姉さんの背中を見つめる。
……見ていたという証拠があるならしかたない。それが正しいんだから。

でも、今の瞳子姉さんの言葉は……どこか無理してるように聞こえたんだ。



***



「しかし、ほんとお前運良かったよなぁ」

「え? なんの事です?」


現在、キャラバンの中。
新たに吹雪さんを乗せたキャラバンは北海道を発ったばかりである。


周りから話し声が聞こえる中、隣に座る染岡さんがそう僕に話しかけた。


「ジェミニストームが追放されたのは知ってるだろ。あれに巻き込まれてたらお前、地球じゃないどこかに飛ばされてたかも知れないぜ?」

「そ、そうですね」

「というより、なんでお前エイリア学園と話してたんだよ」

「え、えっと……興味本位?」

「お前なぁ……」


呆れた、と言いたげな染岡さんを見て、なんとかごまかせたかな、と思った。
……結局はぐらかされた、と言うより丸め込まれたな。
前の座席に座る瞳子姉さんを見つめるも、携帯を見ていて僕の視線に気づいていない。


「名前ちゃん、気絶してたんだよ。起きてすぐに走って……もっと自分の身体を大事にしなきゃ」

「あ、はい……キヲツケマス」


僕に心配の声をかけたのは、もう片方の隣に座っている吹雪さんだ。
吹雪さんは僕の隣を希望したため、今座っている座席は満員である。というより、このキャラバンの長座席、三人まで座れるんだね……。


「僕、そろそろ寝るので起こさないでください」

「? どうして? もっとお喋りしようよ」

「止めとけ。こいつ、乗り物によえーんだ」

「そうなんだ。それなら染岡君、お喋りしよ」

「会話するなら僕を挟まないでほしいんですけど……」

「じゃあ俺のとこ座れ。窓側の方が酔わないらしいぞ」

「ありがとうございます……」


染岡さんと席を交代し、僕は窓側に身体を寄せる。
毛布を強く巻いて、僕は目を閉じた。





2022/2/20


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