対 尾刈斗中



練習試合当日


「……制服洗濯されてたから、私服で来ちゃった」


自分の通う学校に私服で来たことを少し気にながら周りを見渡す。
まあ大丈夫か。どうせ僕だって気付かれないだろうし。

雷門中の生徒達が囲んでいるグラウンドを、遠くで眺めている。
うん。他校生だって思ってくれるでしょ。学校では皆がいる中髪下ろしたことないし。


「……ま、絶対に行くなんて言ってないし、理由付けなら適当に言っておけば問題ないか」


春奈に絶対来い、と言われていたが、初めは来る気がなかった。
……春奈が夢中になってるから、試合を見に来たって事にしよう。決して気になってるから見にきたわけじゃないぞ、うん。

……春奈には、後で連絡しておこう。
グラウンドに設置されているベンチに座っている春奈をちらっと見た後、首に掛けていたヘッドフォンから聞こえる音楽を止めようと携帯を触っていた時だった。


「___“光のストライカー”、苗字名前」

「!!」


僕の名前と、異名を呼ばれたのは。
耳元で聞こえた声に身体がビクッと反応する。

誰だ!?
少し後退し、声の聞こえた方に顔を振り向くと、


「あんたは、帝国の……!」


そこにいたのは、帝国学園のキャプテンと、11番の人だった。
私服姿なので、恐らく雷門中と尾刈斗中の練習試合を見に来たんだろう。


「その反応。本人で間違いないようだな」

「……僕の事、まだ知ってる人いたんだ」


1年前の事なのに、まだ知ってる人がいたんだ。
そう思いながら、ウォーミングアップしているサッカー部に視線を移した。
はっきり言って、会話する事ないし。


「俺達帝国と雷門の練習試合を見てどう思った」

「胸糞悪いものだったよ」


帝国のキャプテンの質問に包み隠さず答えた。
こんな事聞くなんて、何を考えてるんだ?
横目で帝国学園のキャプテンを見る。


「君達の目的が豪炎寺修也だと言うのは分かったけど、彼らを傷つけてまでする必要があったの?」


僕の問いに、帝国学園のキャプテンはニヤリと笑った。





2020/12/27


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