参戦! 光のストライカー
side.音無春奈
「美少年?」
「ああ!河川敷の橋んとこにいたんだ!その子が“光のストライカー”呼んで来てくれるってさ!」
塔子さんの案内の元、私達は今河川敷へ向かっていた。
「美少年?……もしかして苗字の事か?」
「そいつ女じゃなかったか?」
「え?……まあ確かに男か女かどっちかわかんない顔してたけど、多分男」
お兄ちゃんと会話している塔子さんの言葉を聞いて苦笑いを浮べる。
……また男の子と勘違いされてるのね、名前。
「実は、名前は髪を下ろすと男の子っぽく見えるんですよ。元々中性的な顔をしているので、余計に」
「じゃあそいつが“光のストライカー”だったのか?」
「あ、ここ!あの橋んとこにいたんだよ!」と塔子さんが指を指す。
「んー……あ!わかった!!」
悩んでいる素振りをしていたキャプテンが急に声をあげた。
「俺達、学校のグラウンド借りられない時ここで練習してただろ?だからここは俺達にとって思い入れのある場所だ!」
「確かに。最近はグラウンドを借りられるようになったから忘れてたよ」
キャプテンの言葉に風丸先輩が頷く。
確かにフットボールフロンティアで勝ち進んでいったお陰でグラウンドの使用優先度がサッカー部に譲られるようになって、河川敷で練習する事は少なくなっていた。
偶にイナビカリ修練所に篭もる事もあったし。
「俺は雷門に冬海の件で謝罪に来たとき、苗字がいた」
「私は貴方達がイナビカリ修練所で特訓し始めた頃、ここで苗字さんと会ったわ」
お兄ちゃんと夏未はここで名前と会った事があるらしい。
名前の家はこの橋の向こうに住んでいる。
きっと下校中によく見ていたんだろう。
「じゃあここが苗字にとって、思い入れのある場所……!」
「そうだよ」
キャプテンの言葉を肯定する声が後ろから聞こえた。
後ろを向くと、私服姿の名前がこちらへ歩いて来ていた。
「あーーーッ!!?」
「さっきの!!」
キャプテンと塔子さんが名前に指を指しながら叫ぶ。
「名前!」
「よっ、春奈。それと、雷門の皆さん?」
「お前、“光のストライカー”だったのか?!」
「うん。僕が“光のストライカー”って呼ばれてる人だよ」
「一応ね」と塔子さんの方を向いて名前は言った。
「それより……誰もここに気付かないって、どういう事!?」
「すまんすまん、さっき気付いたんだよ」
キャプテンに向かってギャーギャーと叫んでいる名前だったが、表情はどこか楽しそうだった。
2021/02/22
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