対 世宇子中



「いやぁ春奈、あの時僕を省いてくれてありがとう〜!お陰で染岡さんに追いかけられなくて済んだよ〜」

「なんであの時、見学って言ったのかしら……」


隣で春奈がぶつぶつ言いながらジャガイモの皮を剥いている。
その隣には豪炎寺さんがいる。


「すご〜い!豪炎寺先輩、料理もできるんですね!」

「よく妹に作ってやってたからな」


春奈が豪炎寺さんの手際を見て、そう言った。
どうやら豪炎寺さんには妹がいるらしい。


「サッカー部はお兄ちゃん率高いな……」


まず豪炎寺さんでしょ?次に鬼道さん。で、壁山に……あれ。あんまり知らないや。


「名前はお兄ちゃんが大好きだもんね〜」

「勿論! 兄さんが好きで悪い?」

「…そういえば苗字に訊きたい事があるんだ」

「訊きたい事?」


横から来る春奈の攻撃を受けながら、首だけ豪炎寺さんの方へ向ける。


「ああ。……あまり、皆に言われたくないだろうし、後で話さないか?」

「? ……分かった」


豪炎寺さんは何を聞きたいのだろう。
そう思いながら、ジャガイモの皮を剥く作業に戻った。


「……」


チラリ、とある場所へ視線を動かす。
その場所には、ノートを見つめている円堂さん。
“マジン・ザ・ハンド”が、必殺技がそんなに大切だろうか。
他に大切なことがあるだろう。……それも、貴方がとても大切にしているものが。


「……はぁ」


単純だからこそ、なのかな。
そういえば、今まであの人には“壁”というものがなかった。
試合もなんだかんだで全部勝利してきた。
……だからこそ、こうやって悩んでいるのかな。


「どうしたのよ」

「ん? ゲームしたいなーって思って」

「……貴女、何しに来たのよ」

「だって僕、サッカー部じゃないのに此処にいるんだよ?しかも強制だよ?…分かってよっ、僕の気持ち!!」

「なら、試合見に来たりとか何かと気にしてなかったら良かったんじゃなぁい〜?」

「う……っ」


春奈に何も言い返せなかった。





2021/02/21


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