対 世宇子中



「ただいま〜」

「おかえり、名前ちゃん。……あら、お友達?」


僕の声に返事をしながら現れたのは、ばあちゃんだ。
そして、隣には荷物を持った春奈がいる。
先に春奈の家に向かい、僕が逃げ出さないように春奈が家まで着いてきたのだ。


「初めまして!音無春奈と言います!」

「春奈ちゃんね。名前ちゃんからよく名前を聞く子だわ、いつもありがとね」

「いえいえ!」

「あのさ、ばあちゃん……」


春奈との会話を割って、ばあちゃんに声を掛ける。


「サッカー部の合宿に参加する事になって……」

「あらそうなの?分かったわ、楽しんできなさい」


僕の言葉にばあちゃんはにこり、と微笑んで了承してくれた。


「急にごめんね」

「良いのよ。最近帰りが遅いから、悠君以外の所に遊びに行ってるんじゃないかって思ってたのよ」

「べ、別に遊びに行ってるわけじゃ……」

「じゃあ、さっき言ってたサッカー部の所かしら?」


ばあちゃんの言葉にビクリと反応する。
僕の反応を見て、ばあちゃんがクスクスを笑う。


「図星ね」

「う……っ」


顔が熱い。
目を逸らして、ばあちゃんを視界から外す。


「さ!許可も下りたことだし、準備しましょ!」


春奈は「お邪魔します!」と言って靴を脱いで揃えた。
僕も靴を脱いで揃えて、春奈の隣に立つ。


「合宿って、響きが良いわよね〜」

「言っとくけど、する側はきついんだぞ……」

「名前、合宿したことあるの?」

「あるに決まってるだろ」


世界大会の代表に選ばれたらもれなく合宿所に泊まる事になる。
そこから一日中練習だ。
春奈と会話をしながら、自分の部屋へ向かう。


「わ〜、トロフィーがある〜!」

「あー、それ?小学生部門の大会で貰った奴だよ」

「すごいすごい!本当に貴女は“光のストライカー”って呼ばれるほどに有名なのね!」

「褒め言葉として受け取りまーす」


春奈の言葉にそう返しながら、バックを出して、その中に衣服を放る。


「ねえ、ゲーム機持っていっても良い?」

「なんでよ」

「だって僕、別に練習するわけじゃないのに呼ばれたんだよ?どうせ暇だろうし」


結局春奈の許可に関係なくゲーム機を鞄に突っ込む。
……あ。


「どうせ着ないだろうし、ジャージに着替えよ」

「……名前、試合当日は制服だからね」

「わ、分かってるよ……」


……確かに、今までの試合を制服で見たのは帝国学園との練習試合くらいだな。
それに、今日は兄さんのお見舞いに行けなさそうだ。……後でメッセージ送っておこう。





2021/02/21


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