対 木戸川清修中



「……って、場所は河川敷かよ」


帰り道を歩いていると、河川敷のグラウンドに先程の三兄弟の人達と円堂さん、フィールドの外には豪炎寺さんと鬼道さんがいた。
グラウンドを見ていると、こちらに鬼道さんが気付き、つられるように豪炎寺さんもこちらを見上げていた。
……これ、降りてこいって言われてる。
まあ別にいいけどさ。


「ねぇ豪炎寺さん。……いいの?あんなに言われてるのに」

「お前が気にする事はない」


これ以上何を言っても口を割らないだろうし、僕はグラウンドに視線を移した。


「“ファイアトルネード”……!?」


三兄弟の1人が、“ファイアトルネード”を使ったのだ。
鬼道さんも同じ事を思っていたのか、僕と声が揃った。


「いや、回転が逆だ!」


豪炎寺さんの言葉を訊いてからよーく見てみると、確かに回転が逆だ。


「これが、“ファイアトルネード”を超える、俺達の必殺技…!くらえッ!“バックトルネード”!」


“バックトルネード”と呼ばれた必殺技が円堂さんに向かって行く。


「“爆裂パンチ”!」


円堂さんが“爆裂パンチ”で、“バックトルネード”に立ち向かう。
そして、ゴールを見事に守った……と、思えば


「はぁ……っ!?」


その後に他の二人も“バックトルネード”を放ってきたのだ。
勿論、円堂さんは反応出来る訳がなく……。


「卑怯だ……ッ!!」


自分からこんなにも低い声が出たことに驚いた。
いや、そんなことがどうでも良い。


「そのいかれた頭、叩きのめしてやる……!」


ずっと我慢していたイライラが爆発し、グラウンドに入ろうとした。


「よせっ、苗字……!」

「っでも!!」


あの三兄弟の元へ向かおうとした時、僕の腕を豪炎寺さんが掴んだ。
流石に男女の力の差は大きいもので振り払おうとしても力が強くて出来なかった。


「離して豪炎寺さんッ!あんな奴ら、僕が……!」


豪炎寺さんに手を離して貰うように言っていると……


「やめろーッ!!!」


という声がグラウンドに響いた。
その声は聞き覚えがあった。
声のした方へ振り返ると、そこには


「……風丸さん。木野さんに、宍戸、土門さん……もう一人は誰だ?」


河川敷のグラウンドに続く階段に、その5人がいた。
「ストップだストップ!」と声を裏返しながら焦った様子で風丸さんが降りてきた。


「喧嘩は不味いぞ、円堂!」

「喧嘩?」

「違うのか?」

「俺は決闘だって訊いたけど……」

「誰がそんなことを…?」


……誰が言ったのかは知らないが、喧嘩ではない。決闘はー……まあ、間違ってないかもしれない。
てか、あの場にはこの5人はいなかったはず。誰が伝えたんだ?


「だって!『やってやるー!』とか、『着いてこい』とか、ものすごく喧嘩になりそうな感じ……だったじゃないですか!」


お前か、宍戸。
僕と同じ1年の『宍戸佐吉』が、彼と一緒に来た4人にそう伝えたんだろう。
円堂さんも「サッカーの勝負だよ、サッカーの!」と呆れたような口調でそう言った。
木野さんも、「もーっ!慌てちゃったじゃないの!」と宍戸に言っていた。
……確かに、そうなる前の状況はそんな剣幕だった気がする。もし宍戸が最初からその場に居合わせていなかったのなら、そう勘違いしたのも頷ける。…その場にいなかったから勘違いしたんだった。


「ほーんと、人騒がせな事。ま、いつもの事だけどね」

「雷門夏未まで……」


声がした方へ首を動かすと、例のあの黒い車をバックに雷門夏未がグラウンドに続く階段に腕を組んで立っていた。
雷門夏未が此処へ来た理由は何となく分かる。喧嘩となれば、大会に響くし、そもそも他校生だ。問題が起きた場合大変な事になるからだろう。確か、雷門夏未って理事長代理だったはず。…大変だねぇ。


「学園を預かる身としては当然です。それに不祥事を起こした場合、皆の大好きなサッカーが出来なくなるわよ。木戸川清修の皆さんも、トラブルは嫌でしょう?」


雷門夏未が三兄弟にそう言う。


「僕達は挨拶に来ただけです。挑んできたのはあちらの方ですから」

「嘘吐き……!向こうが先だったじゃないか……!!」

「落ち着け苗字」


どうして豪炎寺さんは落ち着いていられるの?
どうみたってあれは反則だったじゃないか!
それに、貴方の事を悪者扱いしているんだよ……?





2021/02/21


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