対 木戸川清修中
「さて、ギャラリーも増えた事だし〜?____見せてやるぜ!」
「武方三兄弟、最強の必殺技を!!」
そう言ってドリブルを始めた三兄弟。
「“トライアングルZ”!!」
なに、あの三人技……!
“トライアングルZ”と呼ばれた必殺技が、円堂さんの元へ向かう。
「“爆裂パンチ”!!……ぐあッ!!?」
円堂さんは“爆裂パンチ”で立ち向かった……と思った時、ボールが円堂さんの顔に直撃した。
そして、ゴールを許してしまった。
「あーれれれぇ?ボール一個なのに止められない、ってありィ?」
「どうだ?」
「これが、僕達の連携必殺技……」
「“トライアングルZ”!!」
……ストライカーとしての実力は、まあまああるらしい。
だけどあの態度は見過ごせない。
「ねえ」
僕はそう言ってグラウンドに入る。
「僕にそのシュートを打ってよ。……止めるから」
三兄弟に向かってそう言った。
「誰だぁ?君は?」
「ふん、名前を教える気はない。だけど、君らのシュートを止める……いや、打ち返せる自信はあるよ」
「打ち返すぅ〜?僕達の最強の必殺技を打ち返す事などできる訳ないでしょう?」
「打ち返す。……散々円堂さんを弄んだ君達を、今度は僕が弄んでやるよ」
「選手でもないお前に、俺達に勝てるのかァ?」
突然割り込んできた僕に、三兄弟はそう言った。
……ふっ、愚問だな。
「勝てるよ。……余裕でね」
円堂さんの隣に立って、三兄弟と対面する。
「ほら、打ってきなよ。えーっと、何だっけ必殺技。忘れちゃったぁ」
「なんだと!?」
「まあいいや。折角だから選ばせてあげるよ。『止める』と『打ち返す』、どっちがいい?」
「生意気め!その言葉、後悔させてやるよ!!」
三兄弟の真ん中にいた人が、そう言ってドリブルを始めた。
外野から、僕を呼ぶ声が聞こえる。
「ねえ円堂さん。打ち返すと止める、どっちが心折れると思う?」
「え?」
「やっぱり、打ち返した方が心折れるかな。あ、円堂さん。足当たるからどいてなよ」
正面を見ながら円堂さんにそう言う。
「……彼らには、恐怖を味わって貰わないとね」
そのいかれた頭に、“恐怖”を埋め込んであげる。
円堂さんが離れた所を横目で確認して、正面を見る。
「“トライアングルZ”!!」
三兄弟の必殺技が飛んでくる。
向かってくるボールを見つめ、威力を分析する。
「……ふふっ、余裕」
その場で一回転して勢いを付けて、ボールに触れる。
変なポーズを決めている三兄弟の方へ向けて狙いを定める。
「大したことないね」
僕が蹴り返したボールはピンクの七三分けの顔すれすれを通過した。
僕の勢いもプラスされたそのボールは、大きな音を立てて向こう側のゴールポストに当たった。
「言ったでしょ?……打ち返すって」
どうやら本当に打ち返されるとは思わなかったのか、僕の言葉に無反応の三兄弟。
「君らみたいな人、大っ嫌いなんだよね。そして、そういう人間が恐怖の色に染まった顔が大好き。……ねぇ、傷ついた?心折れた?」
僕が微笑みながらそう三兄弟に問いかける。
黙ってちゃ分からないよ。感想を聞いてるんだから答えてよ。
僕が近づいてくる度に、少し後ずさりしてる姿なんて滑稽で仕方ない。
「何やってるんだ、お前達!!」
僕が三兄弟に近づいていると、その声が聞こえた。
その方向を見ると、大人の男性と、制服を着た男の人がこちらに向かって走ってきていた。
2021/02/21
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