対 木戸川清修中



「どういう事だ!なんでお前達は……っ」


駄菓子屋から出て円堂さん、鬼道さん、豪炎寺さんと、木戸川清修の3TOPが対面している。
僕は小学生であろう三人の子達の近くでその様子を腕を組んで見つめる。


「豪炎寺修也を叩き潰し、木戸川清修の…いえ、僕達三兄弟の恨みを晴らしたい……」

「それは……」

「それは!」


円堂さんの言葉に三兄弟は一人ずつしゃべり、豪炎寺さんを指さして


「豪炎寺が知っているから訊いてみて!!」


……と、三人合わせてそう言った。
兄弟とか、って以心伝心的なものがあるって訊いたことがあるけど、これは凄い…。
っていうか、訊いてみてって君らが話すんじゃないのかよ!?

呆れながら三兄弟を見つめていると、隣にいた小さな女の子が不安そうな顔をして僕の腕を掴んだ。
まあ、女の子はこういうの見たら怖いって思うよね。
少しでも不安を除こうと、女の子の頭を撫でる。

視線は円堂さんと鬼道さんの間に立っている豪炎寺さんに向く。


「去年のフットボールフロンティア。木戸川清修は、その方のお陰で決勝まで勝ち進んだ、と言っても良い……」

「確かにそいつの力はずば抜けていた。俺達三兄弟は出る幕がなかった!」

「……悔しいけど、それが現実っていうか…。だから俺達は、お前に夢を託した。みたいな?」

「貴方がいれば絶対に優勝できると信じてた!でも、貴方は……!」

「「「決勝戦に姿を現わさなかった!!」」」


いやあ、息ぴったり。
……いや、それよりもさっき豪炎寺さんに訊いてみて、って言ったくせに自分等が喋ってるじゃん。
君達、この子達に怖がられてるよ?悲しくないの?
そう思いながら、僕にしがみついて怯えている三人の子達に笑顔を向ける。


「待ってくれ!豪炎寺は……!」

「お前は、俺達の夢を裏切った!」

「英雄だと思ってたのに、決勝戦の試合にビビって逃げ出した、『卑怯者』だったんだ!!」

「違う!!豪炎寺はそんな男じゃない!!あの日、豪炎寺は……!」

「やめろ」


円堂さんと三兄弟の言い合いに、豪炎寺さんが制止の声を出した。
豪炎寺さんは何か理由があって去年のフットボールフロンティア決勝戦には出られなかった。
怪我とか病気なら分かるけど、それだったらこの三兄弟がこんなにも豪炎寺さんに対してこんなに攻撃的にはならない……はず。多分。
それに、僕も気になっていた。……どうして去年のフットボールフロンティア決勝戦に、豪炎寺さんは姿を現わさなかったのだろう、と。
……っていうか、あの三兄弟が言ってる事って、だたの他力本願じゃん!勝手に期待を押しつけておいてその言い方はないだろ!


「だけどさ!」

「もう済んだ事だ。事実は変わらない」


円堂さんは、豪炎寺さんを悪く言われているのが納得いかないらしい。
……この三兄弟、僕の嫌いな人種だ。
勝手に期待を押しつける人。……ああ、イライラする。


「……お兄ちゃん、顔怖いよ?」

「…え?あ、ああ、ごめん」


僕にしがみついていた女の子が、こちらを見上げてそう言った。
慌てて笑顔を見せて、誤魔化していると、ボールが跳ねる音が聞こえた。


「ま、折角挨拶に来たんだし、偵察するよ。今の豪炎寺君の力を見てみたいな〜、みたいな?」

「悪いが、する気はない」

「おや〜?また逃げるつもりですかぁ?やっぱりお前は……!」


背を向けた豪炎寺さんに、三兄弟の1人はそう言って、足を大きく後ろへ振りかざし……


「臆病者の、卑怯者だァ!!」


ボールを蹴ったのだ。


「危ないッ!!」

「豪炎寺ッ!!」


咄嗟に出た声が、円堂さんと被る。
僕にしがみついている三人の力が強くなる。


「……」


ボールは円堂さんの手に当たって、三兄弟の方へ跳ね返っていった。
円堂さんのお陰で、豪炎寺さんは無傷だ。
もしあれに円堂さんが反応出来なかったら、豪炎寺さんは無傷じゃないぞ……!


「くっそぉ…!もう我慢できない……!お前等の偵察とやら!俺が豪炎寺の代わりに受けてやる!」

「円堂!?」

「何言ってるの?」

「ちょー意味分かんないんだけど、みたいな?」


豪炎寺さんに対しての感情うんぬんの前に、彼らの行動は目に余るものがある。
今のように、豪炎寺さんに向かってボールを蹴るとか。
やった本人達は反省のはの字も見当たらない。


「ストライカーなら、相手のキーパーの力を知りたいんじゃないのか!?」

「それはそうだなぁ」

「お前等が豪炎寺より凄いというなら、俺からゴールを奪って証明してみろ!!」


……円堂さん。相当豪炎寺さんに対して言われている言葉に激怒してるんだな。そういう仲間思いな所が良い所だけど、それが偶に良くない方向へ流れる事もあるんだよ?

三兄弟の人達は、円堂さんの事を『時代遅れの熱血君』なんて言ってバカにしている。……それが、あの人の良い所なのに。ほんと、いちいち言う言葉がイライラする材料なんだよなこの人達。


「これは五分と五分の偵察だ。何故なら、こちらはキーパー力、そっちはFW力を見せ合うんだから」

「さあ、やるのか?やらないのか!どっちだ!!」


鬼道さんの言葉の後に、円堂さんが三兄弟の人そう言う。


「卑怯者の豪炎寺君と違って、俺達が逃げるわけないっしょ?みたいな?」

「…よし!着いてこい!!」


そう言って円堂さんは三兄弟の人達に背中を向け歩き出した。
その後を、豪炎寺さん、鬼道さんが着いていき、三兄弟の人達が少し間を空けて着いていく。


「大丈夫かなぁ……」

「大丈夫さ」


女の子にそう言って頭を撫でる。
さて、あの三兄弟の人達は三人に任せて僕は家に帰ろうかな。ずっと見てたらイライラするし。
しがみついていた三人の子達に手を振って、商店街を後にした。





2021/02/21


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