対 千羽山中



後半戦開始

どうやら雷門はこれまで2TOPで来たのを染岡さんの1TOPにフォーメーションを変えた。
……これは鬼道さんの考えかな?


「囮作戦、って所かな」


雷門は、染岡さんと豪炎寺さんの二人だけが攻撃要因ではない。
……雷門の面白い所って、意外な人物が攻撃に参加する所なんだよね。


「“イナズマ落とし”か」


鬼道さんが豪炎寺さんにパスを出す。
後ろから上がってきた壁山を踏み台にして、豪炎寺さんが更に高く飛ぶ。
“イナズマ落とし”が千羽山のゴールに向かって行く。


「!……ほう、止めるか」


染岡さんの元にいたDFの人が、いつの間にかゴール前に戻ってきており、“無限の壁”を展開した。

雷門中の考えは、DFを引き離して“無限の壁”を発動させないようにし、その隙を狙ってゴールを決める、と言うことだろう。
しかし、残念ながら染岡さんについていたあのDFは思ったより速いらしい。

田舎出身のサッカーチームらしいが、やはり自然相手に相当鍛えられているんだろう。
ま、その点なら僕も割と自然相手に鍛えてきたし、負けてないと思うけど。

次に雷門は、豪炎寺さんと風丸さんによる必殺技“炎の風見鶏”で勝負を挑んだ。
が、これも“無限の壁”は完全に止めた。


「へー、“炎の風見鶏”も止めるか」


じゃあ、あの技ならば?
そう思って視線を雷門ゴール前に、円堂さんに向ける。
お、円堂さんが上がった。……“イナズマ1号”か。


「……ん?」


円堂さんと豪炎寺さんによる“イナズマ1号”が“無限の壁”に挑む。
今の、ちょっと惜しかったな。
しかし、結構強力な技を使っているのに全部止めるのか。すごいなー、“無限の壁”。


「僕のシュートも止めてくれるのかなー」


そう口に出しながら、フィールドを見下ろす。
顔を下げているチームメイトに、円堂さんが何かを伝えている光景が移る。


「諦めるなんて言わないよね、雷門」


かけ声をあげた雷門を見て、僕はそう声に出した。

雷門のコーナーキックで試合再開。
素早い攻撃で勝負を挑む雷門だが、“無限の壁”を使わずともあのGKは結構動けるようだ。


「……時間、あまり残っていないな」


携帯の画面に表示されている時刻を一度見て、フィールドに視線を移す。
ボールは鬼道さんに渡る。
そこに千羽山中のディフェンスの必殺技が。


「…!」


再び円堂さんが前に出てきた。
鬼道さんは円堂さんにパスを出した。
その時、ボールが紫色の光を纏っていた。……まさか、この土壇場で?


「は、はは……っ」


円堂さん、豪炎寺さん、鬼道さんが打ったボールは黄色に近いオレンジ色と紫色を纏ったイナズマを纏わせ、千羽山ゴールへ向かって行く。
立ちはだかるのは“無限の壁”。


「……」


会場が静まり返る。実況も言葉を失っている。
……“無限の壁”、崩壊。
その言葉が浮かび、フッと笑った瞬間会場から歓声が上がった。
まあ、今まで点を入れさせなかったみたいだし、破られた事に驚いて固まるのも仕方ないかな。

1-1
後半戦終了間近、雷門は同点へ追いついた。


「この土壇場で新しい必殺技を編み出しちゃうなんてさ。……早速雷門に染められちゃったんじゃない?鬼道さん」


思ったことを口に出していると、染岡さんの“ドラゴンクラッシュ”が決まった。

1-2
雷門が逆転した。
そして鳴り響いたホイッスル。……試合終了のホイッスルだった。
千羽山中の試合に、雷門は勝利したのだ。


「……ん?」


パーカーのポケットから携帯を取り出し、画面を見る。
画面に表示されていたのは、一件の通知。
ロック画面を解除して、通知を確認する。


「……時間から察するに、ハーフタイム中に送られてきたメッセージか」


その通知は、鬼道さんからのメッセージが来ている、と言うもので。


“試合が終わった後、待っててくれ”


……折角雷門に転入したんだから、妹と一緒に過ごせばいいのに。
そう思いながら、会場を後にする観客を見つめた。





2021/02/21


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