雷門中サッカー部との出会い
ホイッスルが鳴り響く……後半戦の始まりだ。
帝国のキックオフで試合が始まった。
11番から9番に渡り、帝国のキャプテンへボールが渡った。
「……?」
帝国のキャプテンさんの後ろから、3人の帝国選手が飛び出していった。3人は真っ直ぐ雷門の陣営へと突っ込んでいく。
「……何をする気だ?」
……もしかして。
僕はある可能性……いや、確実だろうものが頭に浮かんだ。
「いくぞ。デスゾーン、開始。___そして奴らを、引きずり出せェ!!」
帝国のキャプテンさんが、前を走る3人に向かってボールをあげた。……センタリング、やっぱりか!
「「「“デスゾーン”!!」」」
3人の口から、その言葉が出た。間違いない……あれが帝国学園が使う必殺技の一つという訳だね。
“デスゾーン”と呼ばれた必殺技は、まっすぐ雷門ゴールへと向かっていく。さて、我が校のサッカー部はどうやってあのシュートを止めるんだい?
「……まさか、必殺技を使わないつもり?」
両手でボールを受け止めているキャプテンさんに驚く。まさか必殺技を使うまでもない、とか?
いや違うな。あれはどう見たって押されてる。ということはやっぱり、必殺技使えないんだ。
11-0
ボールと共にゴールへ入ったキャプテンさん。この光景を何度見ただろうか。
「続けろ。……奴らをあぶり出すため!!」
帝国のキャプテンの言葉に首を傾げる。……”奴ら”をあぶり出すため?
先程言っていた『転校してきた選手』の事だろうか。
試合再開
「“サイクロン”!」
帝国の3番の人が6番さんに向かって必殺技を使った。……あの様子だと、キャプテンさんだけじゃなく、雷門イレブン全員が知らないんじゃ。そもそも必殺技の存在すら知らないのでは?
「“百列ショット”!」
帝国の9番さんの必殺技が決まる。
スコアは12-0に変わる。
次々と点数は決まっていき、ついには18-0に。
その度に傷ついていく雷門中サッカー部。
技に吹き飛ばされて怪我したならまだ良い。……帝国イレブンは雷門イレブンへ態とボールを当てているのだ。
「酷い……ッ! 人を傷つけるためにサッカーを使うなんて……!」
いつの間にかスコアは18-0。もうここまでくると普通の試合目的で雷門へ来たとは思わなくなった。ま、素人はそう思わないんだろうけど。きっとこの状況に混乱しているはず。だって僕も混乱しているんだもの。
誰がこんな事を予想していただろうか。勝ち目がないのは分かっていた。だけど、まさか相手チームを痛めつけ始めるとは思わなかった。
「……なんて人達だ」
聞こえてくる嘲笑の声の主達を睨み付ける。当たり前だが目は合わない。
「出てこいよ……出てこい! さもなければ、あの最後の1人を……彼奴を」
帝国のキャプテンは、ボロボロになりながらもゴール前に立つキャプテンさんに向けて指鉄砲の形を象った手を向ける。
「叩きのめす!!」
帝国の9番がキャプテンさんの顔めがけてボールを蹴った。……目的の為ならば、人を傷つけても良いのか!!
2020/12/27
加筆修正 2022/05/06
prev next
戻る