ブラックトリガー争奪戦
「やっぱりおれを追ってくるのはあんた達なんだな」
副作用で常時状況を把握していたが、私達を追ってきていたのは太刀川さんと風間隊、そして狙撃手3人だ。
「やっぱり? 副作用で見えていたんだろ。それか苗字の副作用でさ」
「まあねぇ〜」
迅さんが太刀川さんと風間さんの前に降りた。
私もその後ろに降り立ち、副作用で周りの動きを警戒する。
「……やろうか、太刀川さん」
「……あぁ」
太刀川さんが自身の腰に携えている弧月を握る。
「久しぶりだな……迅」
弧月を抜き、太刀川さんは攻撃態勢に入った。
そして風間さんもスコーピオンを生成し攻撃態勢に入った。
「ふッ!!」
「!」
太刀川さんが迅さんにブレードを振りかぶった。迅さんは攻撃を防いだがその威力に吹き飛ばされた。
その隙を狙って風間さんが迅さんの懐に入り、スコーピオンを振りかぶる。しかし迅さんはその攻撃も防ぐ。
だけどそんなの風間さんも分かってる。
風間さんはスコーピオンの形を変形させて迅さん顔を狙った。それも迅さんは躱す。
その次に襲ったのは少し先にいる狙撃手2人……奈良坂君と古寺君が迅さんを射撃。
だが迅さんはこれも躱した。
……今日も正常ですね、貴方の副作用は。
『……! 当真が離れました』
『お、ラッキー』
当真が離れた。
元々イーグレットを構えてなかったけれど、自ら離れてくれるとは。
ま、あいつの考えは分かってる。
あの狙撃手は当たらない的は撃たない主義で、迅さんや私の相手は苦手らしい。何故なら迅さんは予知の副作用で読まれるから、私は副作用で居場所を把握されていたら当たらないから、らしい。
当真も任務でここにいるからサボりはしないはず。
と言う事は嵐山隊の方へ行くはずだ。
残念ながら嵐山隊がいる場所も私の視界内だ。私を狙おうとしても当てられない。多分向こうも分かってる。
『でもまだ狙撃手が2人……特に奈良坂君は厄介ですよ。如何します?』
『うーん、名前ちゃんがいれば基本大丈夫かなぁ』
私は風間隊の2人……『菊地原 士郎』君と『歌川 遼』君の相手をしながら迅さんと内部通話で会話する。
たまに狙撃手2人の狙撃がこっちに飛んでくるけど、弧月で弾くかシールドで防ぐ。
こっちもやられるわけにはいかないからね。
「やだなぁ。苗字先輩やりにくいから嫌なんだよ」
「正直な感想ありがとう、菊地原君」
「……戦闘になると急に強気になるところとか」
菊地原君のスコーピオンを破壊しながらお礼を言っておく。
相変わらず彼は毒舌家である。
「っ!」
そんな彼のトリオン体に1つ傷を付けておく。
続けてこちらに来た歌川君にも傷をプレゼントする。
『やるねぇ、名前ちゃん』
『思いっきりやれないのが嫌ですが、まぁそれが仕事なんで』
嵐山隊には伝えられていない、私と迅さんのみが知る戦略。
今はただ、相手を倒さないように攻撃することに専念する。それが今の戦略だ。
「どんどん下がりますね。ブラックトリガーのくせに」
「包囲されないためには当然の行為だろう。突出するなよ、浮いた駒は食われるぞ」
「でも、どうします? このままじゃ警戒区域外まで行くんじゃ……」
「いや、それはない。2人は市民を危険に晒さない」
周りが私達しかいないため、夜もあって戦っていなければかなり静かだ。
なので向こうの会話は筒抜けである。
「でも確かに、2人にしては消極的すぎるな。……何を考えている、迅」
……どうか、気づかないで。
迅さんの狙いに。
それに気づいてしまったら___迅さんは辛い思いをしなければならない。
2022/2/12
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