ブラックトリガー争奪戦
side.×
「嵐山隊、現着した! 忍田本部長の命により、玉狛支部に加勢する!!」
「嵐山……!?」
「嵐山隊……!?」
「忍田本部長派と手を組んだのか……」
嵐山の発言。
それは太刀川の言う通り、忍田は玉狛の味方をしたと言う事だ。
「遅くなったな、迅」
「いいタイミングだ嵐山、助かるぜ」
「三雲くんのチームのためと聞いたからな。彼には大きな恩がある」
「木虎もメガネくんの為に?」
「命令だからです」
どうやら嵐山は三雲……三雲修に恩があるため、玉狛に加勢する事に賛成のようだ。
対する木虎は上司の命令だからと言い切った。
「嵐山達がいれば、はっきり言ってこっちが勝つよ。……だけど、もう1人ほしいかな」
「!」
迅の発言に風間が反応する。
忍田本部長の部下である嵐山隊がいると言う事は、あの人物も該当する。
___忍田本部長派に所属するブラックトリガー使いが。
「……どうやらいないみたいだが?」
「昔から時間にルーズだからね。もう慣れちゃったよ」
「おまえ、あいつに嫌われてるからな。来ないんじゃないのか?」
「いーや、来るよ」
迅がそう言うと同時に近くの民家から物音がした。
それは足音だ。
誰もがその音の方へと振り向いた。
「まだ始まってなかったんですね。残念」
「どうせ驚かせたかったんでしょ? 副作用に聞かなくても分かってた」
「魂胆が見えてましたか。まだまだですね、私も」
ぶつくさ言いながらその人物は迅の隣に降り立つ。
「S級苗字。ただ今現着しました。忍田本部長の命により、”しかたなく”玉狛支部に加勢します」
「遅刻だよ、名前ちゃん」
「30秒くらいいいじゃないですか」
迅の隣に降り立った人物は、ボーダーに3人いるブラックトリガー使いの1人、苗字名前だ。
「やはりか……!」
「来ると思ってたんですか? それは嬉しいです」
風間の言葉に名前はニッコリと微笑んだ。
彼女の言う嬉しいという言葉は、この状況で自分が来る可能性を予測していた意味なのか、単なる煽りか。
その答えは名前の中にある。
「おれだって別に本部とケンカしたいわけじゃない。退いてくれると嬉しいんだけどな、太刀川さん」
「……なるほど、未来視の副作用か。ここまで本気のおまえは久々に見るな、おもしろい」
そう言うと太刀川は自分の腰に携えているトリガー……2本の弧月の1つを抜いた。
「___お前の予知を覆したくなった」
それを合図に周りが戦闘態勢に入る。
「やれやれ……そう言うだろうなと思ったよ」
そう言って迅もブレード……風刃を抜いた。
「ッ!」
太刀川と迅がブレードを構え、斬りかかりに踏み出す。
その速度、タイミングはほぼ同士。
それが戦闘開始の合図だった。
「!」
嵐山隊と同じく援護射撃を行っていた名前の元に、軌道を描いて飛んでくる弾が。
名前は咄嗟にシールドを展開し、攻撃を防いだ。
「向こうでこんな攻撃をしてくるのは1人しかいない……」
名前はその場を離れ、相手を誘い出そうと試みる。
……まぁ彼女はその相手がどこいるのかは分かっていた。なので、相手が動かないのを見て自ら向かって行く。
バッグワームを起動し、名前はその人物の元へと忍び足で近づく。
「”アステロイド”」
弾を生成し、名前は自分を攻撃した本人へと飛ばした。
……しかし。
「あ、名前さんはっけーん」
相手は自身を囲うようにシールドを展開し、名前の攻撃を防いだ。
「……フルガードね」
「だって名前さんの弾、威力はんぱねーもん」
「君の攻撃は厄介だよ……公平」
名前がそう呼ぶと少年……出水はニヤリと笑った。
「おれとも遊んでくださいよ、せーんぱい?」
そう言いながら出水は両手に弾を生成した。
名前は出水を見ながら自身の腰に携えている弧月を握る。
「しかたないなぁ……付き合ってあげる」
名前は抜いた弧月を構え、不敵な笑みを浮べた。
そこにはいつもの消極的な彼女は存在しない……実の兄同様に戦闘となると性格が変わるようだ。
その笑みは通常の弧月とは違い青色に輝くブレードも相まって、より不敵さが増して見えた。
2022/2/12
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