ブラックトリガー争奪戦



遠征組帰還まであと3日まで迫った。
ゲームの先輩である柚宇より上手くなろうと学校とシフト、ブラックトリガーの訓練の合間を縫ってやりこんでいた。

……流石にラッド討伐作戦後の夜は素直に寝たけど。
別に迅さんに言われたからじゃないから。副作用サイドエフェクトを使いすぎて疲労が溜まってただけだから。


というわけで今日も今日とて部屋でゲームをしていた時。


「おっはよー、名前ちゃん」

「きゃあああああッ!?」


今やっていたゲームが基本BGMのないものだったため、突然聞こえた声に驚き思わず大声を出してしまった。


「可愛い悲鳴、ありがと〜」

「〜っ、このっ!」

「はははっ。当たんない、当たんない」


副作用サイドエフェクトで読まれているからか、手を振りかぶっても躱されてしまう。
今、顔が真っ赤だと思う。
だって、顔が熱いんだもん。絶対赤い。……こんなことなら部屋の中暗くしておくんだった。


「なんで勝手に部屋に入ってきてるんですか!!」

「いや、ノックしたよ?」

「嘘だ!」

「集中してて気づかなかったんじゃない?」

「うっ……」


集中していたのは認める。
だけど、ノックしてるなら気づくはず。部屋の中は静かだったのだから。


「……で、何の用ですか。用件話してさっさと帰ってください」

「相変わらず冷たいなー。ま、それが名前ちゃんだけど」


こうなったらさっさと帰って貰おう。
恥ずかしさを紛らわすために思い着いたのがそれである。


「で、用件なんだけど。……悪いんだけど、真面目な話をしたいから一旦ゲーム中断して貰ってもいい?」

「……分かりました」


ルームを抜けてゲームの電源を切る。
とりあえず立たせておくのもアレなので、迅さんに座るよう促す。
キッチンに行ってとりあえずお茶を注いで渡す。


「ありがと。丁度喉渇いてたんだ」

「迅さんが言うと態とそうしたように聞こえます」

「あっはは〜、まっさか」


相変わらずつかみ所のない人だ。
そこが苦手意識の1つでもあったんだよね。


「じゃ、早速本題ね。はい、これ」

「……これは」

「命令書。忍田さんからのね」


迅さんから渡された1枚の紙。
それは上からの命令が記された命令書だった。


「一体何があったんです? 忍田さんがこれを渡すなんて珍しい」

「あ、受け取ったことあるんだ」

「一度だけ。まあ余程の事がないと出さない、って言ってました」


って、私が命令書を受け取る話はどうでもいい。
迅さんの用件だ。


「で? これが出るくらい何か緊急な事態があったということですか?」

「いや、事態が起こる・・・が正しい」


ということは、迅さんの副作用サイドエフェクトで視えた内容か。


「何が起こるんですか」

「そう急かさないで。これから話すから」


迅さんは一度お茶を口に含み、一息置いて話し始めた。


「目的から話すと、今遠征に行ってるA級上位と三輪隊がおれ達玉狛支部に攻めに来る。そいつらの撤退に協力してほしい、って話」

「今遠征に行ってる隊、って……太刀川隊と冬島隊、風間隊。その隊と三輪隊が……」

「ここでクイズ! その隊に共通しているものは?」


突然クイズと言い出した迅さん。
呆れつつもとりあえずその茶番に乗ってあげる事に。


「………共通点、共通点……あ、派閥ですか?」

「そう。全部の隊が城戸さん派なんだよね」

「偶然、ではないですよね」

「偶然じゃないね。何たって城戸さんから直接命が下るんだから」


城戸さんが命令を?
一体何が起こると言うの?


「あぁ、城戸さん派の隊が玉狛支部うちに攻めてくる目的を話してなかったね」

「そうですよ。そこが1番の謎だったんです」

「ごめんごめーん。で、城戸さん派の目的なんだけど……」



ボーダー内で争いが起きようとしている。
その中心、きっかけになっているもの。
それはなんだと言うんだ。



「___ブラックトリガーの奪取。それが城戸さん達の目的だ」



その言葉に自分の目が見開いていく感覚がした。





2022/2/11


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