ボーダーの顔になる
ついにやってきた団体ランク戦。私にとっては初デビュー戦でもある。
「今日は苗字をランク戦に慣れて貰う事が第一目的だが、狙える所は狙っていこう」
「「「はい!」」」
今回は嵐山隊はステージ選択権はないため、どのステージになるかは分からないそうだ。まあ地形戦ってなると場所によるな……。聞いた話では天候も自由に設定できるらしいし。
そして戦闘開始時は各員の転送位置は全てランダム。ここでチームと合流するしないを選ぶことで勝敗が決まることがあるそうだが、今回は私の慣れが最優先だそうでとりあえずは好き勝手やっていいそうだ。
『B級ランク戦、開始』
開始の合図がきられた。
初めてのランク戦という事で私の中で試したい事が沢山ある。……まずは副作用を最大まで使ってみよう。
「……結構近くにいるな」
目を閉じて相手のいる方角を判断し、視界を強化してその先を見るとそこには敵チームが。
「嵐山さん、早速敵発見しました。落としにいっても良いですか?」
『構わないぞ!』
よし、隊長から言質を貰えたので……敵の首を落としに行こうか!
身長の割に私は機動力が高いと思う。まあ当時の私から比べたらかなり高身長だった兄さんの方が速かったけど。
まあ兄さんと違って私は敵の居場所を特定してしまえば後は___
「な……ッ!?」
___不意を突いて攻撃するだけだ!
「あんたは、S級の……!」
「今は特例で嵐山隊に所属しているから、B級ですよ」
違っていたので訂正を口にしたのだが、直後に緊急脱出してしまったので、伝わったか分からない。
まあでもこれで1点。結構早いんじゃないかな?
「……!」
上にもいる。
私の副作用は視界を強化しているため、通常の人よりも視野が広い。上にも下にも、前にも後ろにも左右にも。自分を中心に展開する視覚強化範囲内であれば、目で見ていなくても居場所を特定できる。
「ひいぃっ!?」
「そんな顔されたら…私が悪者みたいじゃないですか」
勝負においては慈悲はない。
このランク戦というのも、きっとまた起こるかも知れない大規模侵攻に備えての訓練と思えば納得ができる。
「1点…貰います」
首を切った事で、トリオン体を維持できず敵は緊急脱出。
もう2点目だ。これは結構貢献できているのでは!?
『すごいな!もう2点か!』
「ありがとうございます、嵐山さん。さあ、どんどん点を稼ぎましょう」
***
私の初の団体ランク戦は嵐山隊の圧勝で幕を閉じた。
今回のランク戦は私に団体戦を知ってもらうためのものだったのだが……
「まさかこんなにあっさりと勝っちゃうなんて!苗字先輩さっすが!!」
「? 何が流石なの?」
「S級って事だと思います」
「ああ、そう言う事。でもS級隊員だからって強いわけじゃないよ」
そう。
S級隊員っていうのはボーダーの使うトリガーではなく、ブラックトリガー使いの事を指しているのだから、S級隊員=強いというのはまあ間違ってないかもしれない。ブラックトリガーの性能は強力だからね。
……でもそれは、私には言える事じゃない。私がS級隊員という名前を背負えているのは兄さんのお陰だ。
「まあ、もう一人のS級隊員の人は………………私よりちょっとだけ強いと思う」
「結構間がありましたね」
「だ、だって……私より強いとか、認めたくない……!」
「何か闘争心燃やしてる先輩初めて見たかも」
「そ、そうかな……」
まあ、嫌いだから負けたくないって思っているのかも……?
佐鳥君に言われたことについて考えていると、後ろから誰かが腕を回してきた。
「おつかれ〜!見てたよ、名前ちゃんの初団体ランク戦!」
「じ、迅さん!?」
これが噂をすればなんとやらって奴なのだろうか。……いや、噂なんてしてないけど!!
「お、迅じゃないか!珍しいな、本部にいるなんて」
「名前ちゃんのランク戦見るために来ちゃった」
「は〜な〜れ〜ろ〜!!」
回された腕をどかそうと力を込めるも、全く動かない。なんて力で回してるんだこの人……!!
「先輩がすっごく嫌そうな顔してるのも初めて見た……」
「さ、佐鳥君助けてっ」
「迅さん何かしたんですか」
「これ、照れてるだけだよ」
「だ・か・ら!!照れてません!!!」
うぅ……何で今日に限って本部にいるんだこの人……!って、さっきランク戦見るためだけに来たって言ってたな……。
せっかく団体戦で勝って気分が良かったのに…最悪だーーっ!!
2021/03/17
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