強さ比べ

side.緋色



「じゃあ先輩はアステロイドとメテオラを装備するんですか?」

「うん。バイパーとハウンドは私には難しいかも」

「じゃあどこに入れます?結構埋まってますけど」

「メインのフリーの所にメテオラを、オプショントリガーの旋空は正直使わないからその両方にアステロイドをいれようかな」


私と公平は一度トレーニングルームを出て隊室にいた。私の隣には柚宇が座っている。


「じゃあ、そのようにぱぱーっと」


どこに持っていたのか、柚宇はドライバーを取りだした。「なーんかこのトリガーセット既視感があるな……」とか言いながら柚宇は私のトリガーを開けて何やら作業をしている。オペレーターってこんな事もするんだ……。


「ほいっと、これで完了。しっかし名前の装備しているトリガーが弧月しかないとは」

「だってずっと弧月しか使ってこなかったんだもん」

「女性バージョンの太刀川さんだね〜」

「えー、それ何か嫌だなー」


女性バージョンの太刀川さんって何……。私あの人ほどランク戦バカではないけど……そもそもランク戦できないし。あと公平、嫌だって言わないでちょっと傷つく!!
柚宇からトリガーセットを受け取り、お礼を言う。


「じゃあ一度試し撃ちしてみましょ!」

「うん!」


再びトレーニングルームへ入る。自動で換装状態になる。


「そういえば先輩って換装の時の姿、変えないんすね」

「え?変えられるの?」


……お願いだからその目で私を見ないで!本当に知らないんだってば!!


「……後でその話、詳しく」

「先輩、本当に知らない事多いっすね……」


……気を取り直して。
実際に試し撃ちをするため、柚宇に仮想近界民ネイバーを出して貰う。


「先輩はトリオン能力どのくらいっすか?」

「奈良坂君曰く、高いんだって」

「へー!それはかなり楽しみです!」

射手シューター用のトリガーもトリオン能力が高いほど何か変わったりするの?」

「勿論です!弾の射程、威力、弾速とかが使う人によって変わってきます!」


アタッカー用のトリガーにはそんなのなかったからなー。射手シューターとか狙撃手スナイパーはトリオン能力が大きく関わってくるのか。なるほどなるほど。


「じゃあやってみるね……アステロイド!」


1つのキューブが現れ、そのままの状態で目の前の仮想近界民ネイバーに向けて放った。
……瞬間、強力な風圧がこちらにかかった。


「わぁ、すっげぇ!!ほんとにトリオン能力高いんすね!!」

「はは……自分でも予想外」


次に分割してアステロイドを放ってみたが、またもや同じ結果。メテオラでやると威力と共に爆発力がすごかった。……楽しいな、射手シューター用のトリガー!


「じゃあ今度は合成弾ってのをやりましょ!最初におれがやってみますね!」


もう何度目になる仮想近界民ネイバーが目の前に現れる。……倒すべき相手なのは分かってるけど、何もしてこないからちょっと罪悪感が……。


「先輩はアステロイドがメインとサブに入ってましたよね?」

「うん」

「じゃあ……アステロイド、プラス。アステロイド。___『徹甲弾ギムレット』!」


ギムレットと呼ばれた弾は、仮想近界民ネイバーにいくつもの穴を開けた。


「これはアステロイドを2つ組み合わせる事で貫通力が上がるギムレットっていう合成弾です!」

「すごい……!」

「きっと先輩の場合もっとすごい事になると思いますよ!」


自分も公平のようにキューブを合成させる。


「えっと、アステロイド…プラス、アステロイド……これでいいの?」

「……速くないっすか?」

「そうなの?」

「合成弾って合成するのに時間がかかるんすよ。その中でもギムレットは一番遅いんです。先輩どんなトリオン能力してるすか……」


どんなトリオン能力をしてるって言われても、これが元々だし……。
私よりも兄さんの方がトリオン能力高かったからあんまり実感なかったけど、自分もトリオン能力が結構高いんだと改めて実感する。


「よし……ギムレット!!」


何分割に弾を目の前の仮想近界民ネイバーに向けて放つ。
直撃した弾は仮想近界民ネイバーにいくつもの穴を開けた。アステロイドとして撃つよりも威力が上がっているのは確かなようだ。


「うわっ、蜂の巣じゃん!やばっ!!」

「それ、褒め言葉?」

「褒め言葉っすよ!!……先輩、どうっすか?これを機に射手シューターに転向しません?」


「歓迎しますよ?」とこちらに差し出された手。
……確かに射手シューターの魅力は公平から沢山教えて貰った。だけど……。


「私は射手シューターにはなれないよ。公平みたいに上手くないし……」

「おれが教えますよ!」

「ううん、そうじゃないの。……私、弧月を手放したくないんだ」


手放したら、兄さんと一緒に積み上げたものがなくなる気がして。弧月を手放したら兄さんと同じ部分がなくなってしまう気がして。


「さっき公平が嫌だって言ってたけど……私、弧月を使う事はやめないよ。ついでに二刀流もね」

「あれは柚宇さんの言い方が嫌だった、ってだけですよ……。別に先輩の事が嫌いって訳じゃなくて……むしろ、その」

「そっか〜。嫌われてるのかと思っちゃった」

「先輩、変な所で天然っすね……。嫌いだったら普通関わろうとしないと思いますけど」


天然かなぁ、私……?そんな事はないと思うけど……。
あとなんかボソボソ言ってた気がしたけど、気のせいかな。反応からに気のせいだな。


「誘ってくれたのは嬉しいけど、弧月を捨てる事はできない。でも、アステロイドとメテオラは使いたいなぁ……」

「別に攻撃主アタッカーだからって射手シューター用のトリガー使っちゃダメって事はないっすよ!他にも使ってる人いますし!」

「そうなんだ。てっきり射手シューター用のトリガーは射手シューターの人しか使っちゃいけないって思ってたよ」

「因みに、その両方を使う人の事を万能手オールラウンダーって言ったりしますよ」

万能手オールラウンダー……!何それかっこいい……!」

「やっぱり知らなかったんっすね……」


もう知らない事多くても気にならなくなってきた。だって教えてくれない忍田さんが悪いもん、うん。


「でも先輩はS級だからランク戦できないんで、万能手オールラウンダーとは名乗れないっすね……」

「そ、そんなぁ……」


万能手オールラウンダーの方が響きかっこいいのに、私には名乗れないなんて……。仕方ないけど、それが決まりだ。


「そうだ!先輩、時間あるなら模擬戦しません?太刀川さんとよくやってるって聞いて、おれもやりたかったんです!」

「いいね!やろうよ!」


と言うわけで私達は個人ランク戦ブースへとやってきた。
始めて太刀川さんと模擬戦をした場所はC級隊員が使っているブースだったのだが、今度はB級やA級といった正隊員が使用する場所らしい。

ここのブースでも普通の模擬戦をする事が可能らしいので、最近でいうなら太刀川さんと使ったばかりだ。……いや、最近で括らなくても私模擬戦やったことあるの太刀川さんとだけだ。悲しすぎる。
つまり、公平が二人目である。

それぞれブースに入り、パネルを操作していく。


『名前さん!準備できました?』

「うん。いつでもオッケーだよ」


さて、公平との初めての模擬戦。どうなるのかな?





2021/03/01


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