強さ比べ

side.緋色



転送されたのは太刀川さんとやるときと同じく架空の市街地だ。もしかして地形って選べないのかな?そうなのかな?
しかしいつ見ても本物の市街地のようにしか見えない。だって普通に車あるし。


『ランク外戦10本勝負、開始』


公平にお任せしてたけど…なるほど、10本勝負か。
機械的な女性の声が聞こえた瞬間、どこからか弾が飛んできた。瞬時に躱したけど、肩を掠めた。


「せーんぱい、もう始まってますよ?」

「……そうだね」


どうやら向こうが先に私を見つけたようだ。……副作用サイドエフェクト使っておけば良かった。
続けて公平が弾をこちらに放つ。咄嗟に腰についた弧月を2本とも抜き、弾を弾く。


「うっへ〜ッ、まさか弧月で全部弾くとかやばッ!」

「正面からくるなら、シールド張るよりこっちが慣れててねッ!」


最後の弾を弾き切り、視界がよくなった。弾の方向からに公平の位置は……いた。屋根の上にはこちらを見下ろす公平が。……その首、貰おうか!


「!?」

「な〜んちゃって」


これは……変化弾バイパー!?なるほど、あのアステロイドの中に紛れていたのか!


「これは、面白くなりそうだ……」


『苗字、緊急脱出ベイルアウト。1-0、出水リード』


ブースの中へと転送され、設置されたベッドに落下する。こっちのベッドはふかふかしてるから落下しても痛くない。


『まずは1本!頂きました!』

「やられた。でも次はそうさせないよ!」


これは使った方が良さそうだ___私の副作用サイドエフェクトを。


***


『2本目、開始』


副作用サイドエフェクトを発動させ、向こうより先手を取る。それが私の考えだ。


「……いた」


少し先に公平がいるのを発見。さて、後は気配を消して、その首を___


「!? 危ねッ」

「ありゃ、躱されちゃった」


首を狙ったつもりだったが、腕1本しか斬れなかった。まあでもダブルアステロイドとかそういうのは防げたし……って!


「腕なくても出せるの?!」

「出せますよ!!」


まさか射手シューター用トリガーは腕を失っても戦えるとは。知らなかった。公平、言ってなかったよね?


「アステロイド!!」

「うへー、多いよ〜」

「そう言っておいて、全部捌いてるじゃないですか!」


公平が放った弾を全て相殺していく。……これで全部。じゃないね!


「えぇっ!?」

「ごめんね公平。“見えてるんだ”」


今公平には背中に目があったような動きに見えただろう。実際に背中に目があるわけじゃないけど。
副作用サイドエフェクトで後ろを警戒していたんだけど、やっぱり同じ事をやろうとしていたか。そうはさせないよ!
驚いた事で出来た隙を私は見逃さない。……今度こそ、その首貰うよ!


「その首、貰った!!」

副作用サイドエフェクトなんて……聞いてないっすよ……」


『出水、緊急脱出ベイルアウト。1-1、タイスコア』と機械的な女性の声が聞こえた。それと同時に私もブースへと転送される。


『いや〜っ、やられちゃいました〜!まさか先輩が副作用サイドエフェクト持ちだなんて!』

「隠してたつもりはなかったんだけど、まさか使う機会がくるとは思わなくてね。悪いね、公平」

『いいえ、その方が燃えます!』


あら、闘争心を刺激しちゃったかな。

3本目。私は公平が放ったメテオラの爆風に目を眩まし、その隙を狙われて1本取られてしまった。なるほど、目を潰しに来たって訳。
4本目も同じような手を使われたが、私の副作用サイドエフェクトは目を瞑っていても効果が発揮される。視界を闇へと閉ざす事で感覚が研ぎ澄まされ、気配を読む事が出来るのだ。なので、私に向かって来ていた変化弾バイパーの存在にも気づけた。そしてまた驚いている公平から1本取り返した。

暫く私と公平の接戦が続いたが、8本目から私の勝ち越しで、4-6で私の勝ちだ。ブースを出るとそれは沢山の人がいた。本当に沢山。


「あ、名前さん出てきたっ」

「苗字!次は俺とだ!!」

「……その前に、この人集りについて説明してくれません?」


先に出ていた公平の隣には太刀川さんがいた。そして流れるように模擬戦を申し込まれた。……その前にこの沢山の人について私は知りたいです。


「A級とS級が模擬戦なんてしてたら、そりゃあ人集まるって。俺とやってるときもそうだろ?」

「それよりも多かった気がするんですけど……」

「そんなことより!俺と模擬戦しようぜ!!」


この人の脳には模擬戦しかないのか。まあ別に良いけど。それに、前の落ち込みようっていうか何て言うか……その様子がないように見えるからちょっと安心した。
それにしてもしつこい。そんなに何回も言わなくても……と思っていた時だ。


「まだ課題が終わってないだろ、太刀川」

「か、風間さん……!」


青ざめた顔で私の後ろを見る太刀川さん。後ろから声が聞こえたので誰かいるのは分かっている。
後ろを振り返ると、そこには私より身長が低い男の人が。それより___


「風間……?」


その名前は聞き覚えがある。……風間という人が前にボーダーにいたし、そもそもその名前は兄さんが良く口にしていた友人と同じだからだ。


「! ……お前は」

「何々?2人とも知り合いっすか?」


私と風間と呼ばれた人の様子に公平がそう声を掛けた。


「……いや、初めましてだけど名前は知ってるっていうか……」

「お前が香薫の妹か」

「!」


後ろから「香薫?誰??」やら「課題……課題……」やら聞こえるけど、私は目の前にいるこの人から目を逸らせなかった。





2021/03/02


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