愛する君の声が聞こえた



「そうだな……まずどんなブラックトリガーなのか。俺は『トリオンを貯蔵する』トリガーだ」

「トリオンを貯蔵する、だと……?あり得るのか、そんなことが……!」


俺も思う。そんなことが可能なのか、と。
だがブラックトリガーおれがそう言っている。……自分がどんなトリガーなのかと。
“自分については自分が一番知っている”
こんな言葉があるように、俺は自分がどんなブラックトリガーでどんな性能なのか手に取るように分かる。


「嘘ついて何の意味があるんだよ。俺はブラックトリガーだ、自分の事くらい分かるって」


困惑しているまさっちを置いて、話を続ける。


「俺は攻撃の際に貯蔵されたトリオンで戦う。だから起動した後は貯蔵されたトリオンを消費しながら戦うのさ」

「なら、あの日の事はどう説明するんだ?」

「ああ、そのことね。あれは名前がトリガー起動の意思表示をした瞬間に名前のトリオンを吸収しちゃったんだ。急に吸収しちゃったから名前には負担が掛かっちゃったと思う」


本当に名前には悪い事をした。ごめんよ名前……。
でもそういう“仕組み”なんだから許してくれ。


「そのトリオンを貯蔵するためにはどうすればいい?」

「簡単さ。常に俺を身に付けていればいい。触れ合っている場所からトリオンを少しずつ吸収して貯めていくんだ」

「トリオンを貯蔵できる限度はどのくらいだ?」

「うーん……それが限度が“ない”みたいなんだ」

「限度がない……?!」


永遠とトリオンを吸収し、貯めていく。
その貯まったトリオンで俺は戦う事ができる。


「なるほど……。確かにブラックトリガーの性能と認識すれば納得はいく」

「さっきから何メモしてるんだ?」

ブラックトリガーおまえについてだよ。この事は俺に一任されているんだ」

「へー。なんか大変そうだな」

「でも、お前達の事だから、大変だろうと嫌ではないよ」


そう微笑み掛けてくれたまさっち。
……目には少し隈が出来てる気がする。ブラックトリガーおれの事でかなり迷惑を掛けているようだ。


「……! そうだった。香薫、実は二日後にお前の性能を確認するテストがあるんだ」

「へぇ」

「だからまた先程のような部屋に呼ばれる事になる」

「ほうほう。それはちょっと助かるな」

「助かる?」

「ああ。自分について知り尽くしている訳じゃないからな。戦闘訓練みたいなものだろ?」

「そうだな。しかし、その時は私以外にも人がいる。中にはお前が知っている人もいる。だから……」

「俺の存在の事だろ?任せておけって!名前のふりくらい楽勝だって!」


一体彼奴の兄ちゃんして何年だと思っている。
真似くらいお茶の子さいさいだって!


「あのさ、その性能テストって奴が終わったら俺は暫くこうやって、その……まさっちと会うことが出来なくなるのか?」

「ふむ……度々性能テストは行われるはずだ。ブラックトリガーは貴重だからな。それがどうした?」

「いや、その……ちょっとやってみたい事があって……」

「やってみたい事?」


こちらを不思議そうに見つめるまさっちに俺は頷いた。





2021/02/25


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