愛する君の声が聞こえた
「見た目を変えたい?」
「ああ。流石に女性の身体……しかも妹の身体なんて背徳感が募る」
今でもかなり罪悪感を感じているのに……。
まさっちを見ると、何か察してくれた様子の表情をしていた。
「だって、意識がはっきりしたと思えば妹の姿だし抵抗しない訳ないだろ!!」
「ま、まあ確かに分からない事も無いが……。見た目を変えるなんて事、可能なのか?」
「出来るかどうかは分かんないけど……何事も挑戦!やってみなきゃ何も始まんねーだろ?」
ニッと笑いかければまさっちが微笑み返してくれた。
「だがその見た目を変えるという作業にはトリオンは欠かせないだろう。あまり多いとテストの際に困るんだが……」
「そこは上手くやるって!大丈夫だ、俺は察する事も空気も読める男だからな!」
しかしまさっち、結構苦労しているんだろうな……。
俺まだ子供だからよくわかんねーけど。
「今回のテストが上手くいけば、次は三ヶ月後にテストが行われる手筈だ。その間に試したい事全てを済ませておけよ」
「頑張る!……おっ」
身体に異変を感じる。
……あぁ、トリオンが切れるのか。
「わりぃ、まさっち。どうやら時間切れみたいだ」
貯蔵されたトリオンがそろそろ底をつく。
「名前の介抱、よろしくな」
「ああ」
まさっちにそう告げた言葉を最後に、俺の視界は真っ暗に染まった。
***
(忍田)
「香薫だと信じて…いいんだな?」
自分の腕の中で規則正しい寝息を立てる名前を見つめる。
香薫はブラックトリガーになった。その事実はこれから変わることはない。だが、先程の事が夢だとも思えない。
……どうやら私は香薫の死を受け入れられていなかったようだ。
「香薫、任せてくれ」
お前が命懸けで守った名前を、香薫に変わって俺が必ず守り抜いてみせる。
「さて、部屋に戻してやらないとな」
眠っている少女を横抱きにして抱える。
……しかし軽いな。今日こそはしっかりと食べて欲しいものだ。ここ何日しっかりとした食事をとれていないはずだ。
「香薫の事は……やはり伏せて置いた方がいいか」
なんせ死んだ人間…ブラックトリガーになった人物と会話をしたなんて事、信じて貰える訳がない。
さて、今日知ったブラックトリガーの性能についてどう説明をしようか……。
溜息をつきながら、私は名前を部屋に戻した後上層部へと向かった。
愛する君の声が聞こえた END
2021/02/25
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