大規模侵攻・中編
「……またお前か」
トリオン兵を倒してしばらく。
本日4回目の新型トリオン兵が俺の前に現れた。数は4体。
こいつは他のトリオン兵より手応えがあるからな。このモヤモヤした気持ちを晴らすには丁度良い。
「まとめてかかってこいよ」
そう挑発してやれば、まんまと釣られるトリオン兵。お前ら意思あったっけ?ま、そんなのどうでもいいけど。
さっきは貫通攻撃で倒したけど、よくよく考えたら今俺副作用使ってるんだった。
いつもよりトリオン能力が上がってるから、ブレードでも倒せんじゃね?
「はあああッ!!」
突進してきたトリオン兵に俺は両手に生成したブレードで迎え撃った。
……結果、新型は真っ二つになった。
副作用で強化された状態だとあの硬いトリオン兵を斬ることができるようだ。
「1体、2体、3体!! ……さあ」
ブレードの先をトリオン兵に向け、来いと暗示する。
残るはお前だけだ。
「ほらよッ!!」
他の新型と同じく、ブレードで斬りかかった……が。
「あ」
片方のブレードが折れてしまった。
タイミングわりぃ……。
生前もそうだったな。副作用を発動している時、力加減が上手く出来なくてよく弧月が折れてたっけな。
このブレードも弧月を参考に作ってるから、強度も同じくらいに作ってある。楽しいとついついこういうことが頭から抜けちまう。
作ってしまった隙を狙って、新型は俺に向かって腕を振り下ろす。
瞬時に俺は残ったブレードを前に交差して構え、ガードする。
「おぉっ」
まあまあ使ったブレードと、半分に折れたブレードでは完全に防ぎきることはできず、俺は後ろへと吹っ飛ばされる。
「ぐッ」
何かの建物に俺は背中からぶつかった。
これトリオン体じゃなかったら骨折ものだな。当たり前だけど。
「……あー、いってェなァ」
ま、俺に痛覚なんてないけど。
普通のトリガーだったらある程度痛覚を設定できるけど、ブラックトリガーにはそんなものはない。だから攻撃を受けようと無痛だ。
ぶつくさ言いながら立ち上がり、俺をぶっとばした張本人を見る。
新型は真っ直ぐこちらを見つめていて、俺が立つのを待っていたかのように見えた。プログラムされた存在に意思があるわけねーのにな。
八つ当たりで残ったブレード両方を新型の弱点目掛けて投げる。ま、口を閉じられて弾かれ、最後のやつに至っては腕で弾かれた。
「……こういうのがあるから、おもしれェんだよなァ」
新しくブレードを生成して、新型を見据える。
さーて、俺はやられた事はやり返す質なんだよな。
「今度は俺がお前をぶっとばす」
そう宣言し、俺は力強く地面を踏みしめて一気に距離をつめた。
発動したままである副作用のお陰で、結構スピードは出てるはず。
「おせェ!!」
敵の目の前まで来た俺は、咄嗟にガードした新型の腕にブレードをぶつけた。瞬間、新型は吹っ飛んでいった。
さっきのは斬るというよに飛ばすのを目的に攻撃したんだよな。だってやられっぱなしはムカつくし、楽しくねーし。
「どーだ、俺の方が吹っ飛ばした距離なげーだろ」
どこかの建物にぶつかった新型の様子を見たいけど、砂埃が舞って見えない。名前だったら副作用でそんなの関係なしで見えるんだけどな。彼奴は視界範囲内なら何でも見透すんだぜ、すごいだろ?
「やべ、流石に壊しすぎか?」
いくら人がもう住んでないとはいえ、ちょっとやりすぎたかも。
壊しすぎだな、トリオン兵も俺も。
……ここに住んでいた人にとっては大切な場所だったはずだから。
「これでへばったなんて言わないでくれよ」
気持ちを切り替えて、敵に集中する。
ブレードを回しながらゆっくりと歩いて近付いていくと、砂埃を払いながら新型が現れた。
「良い子だなァ。でも、そんな状態なのは残念だ」
……だが、現れた新型の状態は、弱点剥き出しで厚い腕は使い物にならないほどボロボロ。もう長くねーな。
他の3体より手応えがあったから期待してたんだけど。ま、俺が隙を見せたのもあって向こうに少し有利な状況を与えたから良い感じに思えただけかもしんねーな。
「終わりだ、新型」
その言葉と同時に俺は、ブレードで新型の弱点を突いた。
新型は煙を吐きながらその場に倒れ、完全に停止した。
2022/4/16
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