愛する君の声が聞こえた

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「何が起こっているんだ……?」


目の前に映るモニターが映したのは、黒い雷を纏った名前が救護班に攻撃していた所だった。
その様子は攻撃的な性格ではない名前からは想像の付かない動きだった。表情ははっきりと分からず、どのような顔をしているのか分からない。
制御ができていないのか、今の所救護班に攻撃は当たっていない。
一応護身用トリガーを起動させていて正解だった。…だがそれも時間の問題だ。

……どういう事だ?起動に成功したのか?どうして仲間を攻撃するんだ?
疑問に思いながらも、今は目の前の事を何とかしなければ。
忍田は作業員に指示を出し、トリオン反応を確認する。


「トリオン反応がある…!まさか……!」


忍田は目を見開いてその事実に驚く。
名前には通常のトリガーを持たせていない。持たせたのはブラックトリガーだけだ。
……それはつまり、名前はあのブラックトリガーを起動する事に成功した、と言うことだ。


それが分かったのは良いが、このままでは救護班が危ない。
忍田は頭をフル回転させて、何をすべきかを考えていた時だった。


『が、ァ……ッ!』


胸を押さえながら膝を着いた名前。
倒れそうになる身体を支えるよう、片手を床に付け、もう片方の手は苦しそうに胸を抑えていた。


「どうなっているんだ……?」


周りから聞こえる混乱の声を耳に入れながら、忍田はジッとモニターを見つめる。
名前は胸を押さえた状態で倒れ、ピクリと動かなくなった。


「トリオン反応はまだ残っているか?」

「い、いいえ…」

「よし。救護班、急いで医務室に運んでくれ」


作業員の言葉に頷いて、忍田は救護班へ再び指示を出した。


「……苗字隊員がブラックトリガーに適合した事を確認した。あのブラックトリガーは苗字隊員に託す。…忍田本部長、彼女のブラックトリガー使用については君に一任する」

「…分かりました」


忍田が城戸の方へ振り返ってそう答えた。
再びモニターへ忍田が視線を移す。
そこにはストレッチャーに乗せられた、意識の無い名前が運ばれている光景が映し出されていた。





2020/12/28


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