愛する君の声が聞こえた
side.???
_____俺は死んだ
妹を庇って死んだ
なのに、何故まだ意識がある?
……あぁ、これが死後の世界という奴なんだろうか
そう思っていると、真っ暗だった世界に一筋の光と…
“…力を貸して…っ、兄さん……!”
___愛しい君の声が聞こえた気がした…いや、聞こえたんだ
名前、そこにいるのか?
思わずその光に俺は手を伸ばした
「……さん!!聞こえますか!?苗字さん!!」
眩しい光に包まれて、その眩しさが晴れた頃。誰かの声がした。
……名前の声じゃない。
はっきり聞き取れないけど、名前ではない誰かが声を出している事だけは分かった。
「あっ、良かった!目を覚ましたんですね!本部長から体調が悪かったと聞いてます!念のため、今から医務室に___」
視界がぼやけていて、目の前の人物をはっきりと特定できない。
相手が何を言っているのかも分からない。
目の前にいるのは誰だ?…敵か?まさか、近界民?
名前は何処だ?
まさか、近界民に捕まったのか?
あの後、俺は死んだのではなく奇跡的に生き残って名前と共に攫われたのか?
視界は安定していないけれど、この場所に見覚えはない。と言う事は、近界で間違いない…?
「苗字さ、ッ!?」
___名前が危ない。
気付いたら目の前に見える敵に向かって牙を剥いていた。
「な、なに、が…!?」
やっと目の前の人物の声が認識できた。
見た事のない人間だ。やっぱりここは近界……!
「本部長!!本部長ッ!?」
逃がさない
名前は何処だ、どこへやった……!!
「うわああああッ!?」
弱いな
近界民も俺達と同じ人間の姿をしているから、敵か味方か分からない。
だが、目の前に見えている敵の格好は見たことないし、この場所も知らない。
確定した。
此処は、近界で間違い……ッ!?
「が、ァ……ッ!?」
急に息苦しさが襲った。
上手く息ができない
意識が、もた…な…。
「名前……ッ」
名前を……、名前を探さないと……。
彼奴が助け、を……!
息苦しさを感じながら、俺の視界は暗転した。
2020/12/28
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