ビジョンの時間



「例の物は渡してくれたかな?」

「届けたよ。……重要な物なら先に渡しておいてよ。いくら僕が速いからって宅配便扱いしないでくれる?」


寺坂竜馬に渡す物と伝える事を済ませた僕は、シロに報告すべくこの場にいた。
因みにこの場に堀部糸成はいない。


「明日決行日だ」

「ああ」

「勿論、見に来るだろう?」


シロが放ったその言葉は、僕の“本来の目的”を知っている様な気がした。



***



決行日
時刻は放課後

昨日見た擬似的プールにはE組全員が入っていた。……全員ではないな。人数が足りない。
プールサイドには寺坂竜馬とターゲットが立っている。
……あぁ、可哀想に。
あの場にいる彼らは何も知らないのだ。ターゲットも、シロに協力していた寺坂竜馬も。
今から何が起こるのか。


「覚悟はできたか、モンスター」

「勿論できてます。鼻水も止まったし」


寺坂竜馬が構えている銃は本物ではない。
銃の形をした発信機だ。これは本人も分かっている。
しかし、彼にはこう伝わっている___“堀部イトナを呼ぶ為の発信機”だと。


「ずっとテメーが嫌いだったよ。消えて欲しくてしょうがなかった」

「ええ知ってます。この暗殺の後でゆっくり2人で話しましょう」


残念だね、寺坂竜馬。
結局君も……


「彼にとって、都合良く利用できた“駒”でしかないんだよ」


ドォン!!と大きな音が鳴り響く。
あの発信機は確かにシロ達に合図を送ったよ。……君が想像していたものとは違っただろうけどね。
シロはあの時、一度も堀部糸成が“来る”とは言っていない。
この音が彼らには合図だったんだよ。

さあて、現状を説明しよう。
何が起こったのかと言うと、寺坂竜馬が発信機の引き金を引いたと同時に水をせき止めていた場所が破裂した。
プールの中にいた寺坂竜馬除くE組生徒達は流されてしまった。
ずっとせき止めていた物が急に無くなったことでその勢いはとても速い。水の量も多いみたいだし、このままだとみんな死んでしまうね?

まあ僕にとって彼らが死ぬという事実はどうでもいい。
他人なんだから、当然だよね?


「可哀想に。騙されちゃったね、寺坂竜馬」

「れ、レオン……!」


目の前で起こったことに放心状態の寺坂竜馬の隣に降りる。
震える声でこちらを見る彼の表情は、言葉にするなら“絶望”だ。





2021/01/04


prev next

戻る















×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -