ビジョンの時間



「……なにこれ」


後ろから聞こえた声に、そういえば人数が足りなかったなぁ、と思い出す。
その不足していた生徒は……そう、赤羽業だ。


「聞いてねェよ……!話が違うじゃねェか!!」

「そうだねぇ。彼は言葉足らずな所があるから、仕方ないね」


言葉足らず、ではないね。
相手の懐に付けやすい言葉を使うのが上手なだけかな。
だって彼が言っていた事は間違いでは無い。確かに寺坂竜馬は合図を送ったのだから。


「なるほどね……」


僕の肩に手を置く人物は、僕達の会話を聞いていた赤羽業だ。
……殺気。来る!

首を反対に躱せば視界に入ったのは赤羽業の腕。どうやら殴りかかって来たらしい。
武闘派なのか暴力的なのか……。これは後者だな。
どちらにせよ、僕に当てたいなら隠しきれていないその殺気を隠しなよ。


「チッ。……あんたが黒幕?」

「僕が黒幕かどうかはそこにいる寺坂竜馬に聞きなよ」


敢えて僕は答えない。
だって簡単に教えちゃったら面白くないじゃない?


「ふぅん……寺坂。お前、自分で立てた計画じゃなくて、まんまと操られてたって訳」

「言っとくが、俺の所為じゃねーぞ……!こんな計画やらせる方が悪りーんだ……!みんなっが流されていったのも全部奴らが……」


寺坂竜馬の言葉は最後まで言う事はなかった。
何故なら、赤羽業が寺坂竜馬を殴ったからである。


「流されたのはみんなじゃなくて、自分じゃん。人の所為にするヒマあったら、自分の頭で何したいか考えたら?」


倒れた寺坂にそう言い放ち、こちらを見て睨んだ後に赤羽業は走り去ってしまった。
……流されていったE組生徒達を追いにいったのか。
まあ今頃、ターゲットの触手は水を含んで使い物にならなくなった所だろう。


「俺は……、俺は……!」


震えた声で放心している寺坂竜馬を見る。
……彼は、E組生徒を殺しかけた。これは事実だ。
でも、ターゲットは彼らを死なせないだろうね。
なんでそう思うのかって?だって鷹岡の時の怒り様が凄かったじゃない。きっとターゲットは3年E組の子供達が大切なんだろう。
……今目の前にいる彼も、きっと。


「君はどうしたい?」

「え……?」


気付けば僕は寺坂竜馬と同じ目線になり、彼にそう問いかけていた。





2021/01/04


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